一悟術

私と家族の物語(9)~強さから優しさへ変化した夫の仕事~ 

夫は今の仕事が天職だと自他共に認めるほど、仕事が大好きです。
世界の大舞台で活き活きと働ける夫は、本当に幸せ者だと思います。
夫は精神的にもとても強く、論理的思考力にも長けているので、
どんなに厳しい場面でも勝利を勝ち取ることが多かったのです。
そう、夫にとって、職場は戦場でもありました。
ニューヨークで働いていた時、外国の代表と予算の交渉をするのが夫の仕事でした。
夫はタフ・ネゴシエーター(不屈の交渉人)と言われるほど、
理詰めで相手を追い詰めて勝つことが多かったようです。

ある時、発展途上国の代表と交渉をすることがありました。
いつものように、夫が隙のない交渉を展開していき、
あともう少しで勝利というところで、先方の代表がこう言ったそうです。
「君の意見は確かに正しい。しかし、僕は君の意見は嫌いだ!」
その瞬間、夫も含めて、その場にいた人達が全員ポカーンとしたそうです。
緊張感の張りつめた真面目な交渉の場で、「君の意見は嫌いだ」って言われても・・・。

そのまま交渉を続けていれば、確実に夫の勝利だったのですが、
夫は交渉をストップして考えたそうです。
「このままでいいのかな・・・」
そして、相手の代表と長い間話し合いました。
先方は発展途上国の代表なので、自国には貧しい国民がたくさんいます。
夫の意見は正しくても、「はいそうですか」と受け入れて帰れない事情がたくさんあります。
そこで、夫はその代表と協議を続けて、双方にとって一番の解決策を考え出しました。
最初は夫に反抗していた発展途上国の代表も、
夫と協議を重ねるうちに信頼するようになっていきました。
そして、別の交渉の場面で夫が厳しい立場に立った時に、
その代表が他の発展途上国の国々全てに、夫の味方につくように説得してくれたそうです。
そして、「あれは今でも奇跡だった」と夫が感動するほどの大勝利になったそうです。
「強い者が勝つ」という仕事の現場で、
一見弱い立場の人たちが支えてくれたことで勝利を勝ち取った瞬間でした。

それから夫の仕事の仕方は変わりました。
「共存共栄」という言葉を理念に、世界が平和になるように日々努力しているようです(^^)

あれから数年経って、夫は家族の中でも変化を続けています。
夫は自立心が強く、家族に頭を下げるのが苦手でした。
少し古臭いところもあるので、私の実家に世話になるのを嫌がっていたのですが、
去年、夫の仕事が忙しくなり、東京にある私の実家に平日は泊めてもらうことになりました。
今までなら、私から両親に頼んで了解をもらうところですが、
この時は、夫から母に直接頼んでもらいました。
夫が電話で母に頼み、了解を得ました。
そのすぐ後に私が母と電話で話すと、母は「いつでも泊まりに来て」ととても喜んでいました。
そのことを夫に伝えると、なんと夫はボロボロと泣き出したのです!
「嬉しいね・・・」
そう言って泣く夫を不謹慎にも笑ってからかいながら、私も泣きました。
仕事の在り方も、家族との在り方もつながっていると思います。
両方で満たされることで、深い幸福感を感じることができるのかもしれません。
次回は、母との関係についてお話しします(^^)

(向みどり http://ameblo.jp/kokorotabi/ )

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