言いにくいことの伝え方 感情のケアから始める対話術

「言ったほうがいいのはわかってるけど、言いにくい」

「我慢してるとモヤモヤする」

部下や後輩を持つとそんな風に思うこともあるかもしれません。


私もマネージャー職についたばかりの頃に、伝え方に迷うことがたくさんありました。

「これ言ったらどう思うかな」

とか

「どういう反応が返ってくるんだろう」

とか

相手の顔色を伺ってしまいました。



ここでは、

  • 相手の成長に必要なことをストレスなく伝える事前準備
  • 相手が傷つかない伝え方
  • 言いにくい気持ちを手放す方法

についてお話しします。

部下や後輩への伝え方で迷う時

自分の気持ちを相手に伝えたい時にぜひ読んでみてくださいね。

この記事の目次

伝えやすくなる鍵は「事前準備」

「伝えること」は他者との対話です。

でも、それを円滑にするのは自分との対話でした。


自分とどれだけ話をして、自分を話をどれだけ聴くことができるか、その事前準備が一番大切でした。

仕事は準備が9割ってよく聞くけど、言いにくいことを伝える仕事も準備が9割なんだと思います。

私がやってよかった、おすすめの事前準備を書きますね。


わざわざ事前準備なんてちょっと面倒だけど、伝えるための事前準備は

相手との関係にヒビを入れるのか

それとも

信頼関係の橋をかけるのかの大きな分かれ道になります。

自分の話を聴きながら、準備したい3つのポイントをご紹介します。

素直な気持ちを見つけ出す

「この人の話なら、聞いてみよう」

と思われる人って、どんな人だと思いますか?

耳を傾けてもらいやすい話には特徴があります。


それは、素直に話していることです。


ちょっと極端な例だけど、

見え張ってる人

知ったかぶりしてる人

の話ってあんまり聞く気が起きないけど、素直な本音って聞きたくなっちゃうし


売りたいだけの営業って聞きたくないけど

素直なおすすめは聞きたくなるし、相手に届きます。


言いにくい話をする時も、素直に伝えるのは欠かせません。


でも、素直な気持ちと言っても色々ありますよね。


相手が遅刻してばかりの後輩だったら、

「いい加減、迷惑なんだけど」

「なんで何回言ってもわかんないんだろう?」

「もう話したくない」

っていうのも素直な気持ちかもしれません。


相手に伝えるべき素直な気持ちは

「遅刻されてこんな風に困ってる」とか

もうちょっと深いところの素直な気持ちです。


もしくは

相手の遅刻癖が改善されることで、スムーズに仕事を進めたいとか、もっと相手に合った仕事を任せたいとか

相手に伝えた時に受け取ってもらえる気持ちです。

自分の話を聴いておくと、相手に伝えるべき素直な気持ちを見つけることができます。

伝えたい感情を準備する

話をするときに伝わってくるのは、言葉以上に感情です。


「全然大丈夫だよ」

て言いながら、すごくイライラしている様子だったら

「これは全然大丈夫じゃないな…」

って思いますよね。


逆に、言葉が多少厳しくても

「頑張ってるなぁ」

「成長を応援したい」

「一緒に良い仕事がしたい」

そういう前向きな気持ちで話せれば、その気持ちが相手に伝わるものです。

先に自分の話をよく聴いて、どんな感情を伝えたいのか、心の中に作っておくことが大切です。

伝わりやすい長さにする

校長先生の長~い話、生徒に伝わってるイメージはありますか?

長い話を聞いて「結局何が言いたいのかわからなかった」「疲れた」「眠い」と言っている生徒が想像しやすいのではないでしょうか。

何かを伝えるとき大切なのは、簡潔さです。

事前に自分の気持ちを整理しておけば、相手に伝えたいことを簡潔に言葉にできます。

事前準備 3ステップ

伝えにくいことを伝えるための事前準備、3つのポイント

  • 素直な気持ちを見つけ出す
  • 伝えたい感情を準備する
  • わかりやすい長さにする

をご紹介しましたが、次はその3つを準備するための「自分の話の聴き方」3ステップをご紹介します。

1、素直な気持ちを書く

おすすめは、自分の気持ちを書いてみることです。

伝えようと思った時に湧いてくるのは、どんな気持ちですか?


例えば、

「言いにくい…」

「口うるさいと思われたくない」

「当たり前のことができない相手にイライラする」

など。


書いてみると、整理できることって意外と多いです。


「何回言えばわかんの?」

「頭悪いんじゃない?」

みたいな、あまり大きな声では言えない文句も、人に聞かれたくないトゲのある言葉でも大丈夫です。

まずは素直に書いてみましょう。

2、伝える目的を整理する

自分の気持ちを十分に聴けたら、次は伝える目的を整理してみるのがおすすめです。

うまく伝えられない時、目的が1つに絞れていないことが多いです。



本来の目的は、相手の遅刻癖を改善して業務への支障なくす

なのに

「関係にヒビを入れたくない」って気持ちから相手に嫌われないことが目的になってしまっていたり

イライラしていると自分の意見をわかって欲しいとか、自分の正しさを証明することが目的になってしまったり…

本来の目的と、感情的な目的が混線することがあります。


ある程度自分の話を聴いて、気持ちが整理できた状態で本来の目的を整理してみると、何を伝えるべきなのか見えてきます。


本来の目的は整理できたけど

「やっぱり、どう思われるか気になる」

って時や

「自分の正しさを証明したいと思ってしまう」

なんて時は、先にその気持ちをちゃんと聴いてあげたほうがいいです。


感情が昂る時は、心の奥に「本当は聴いて欲しいけど、聴けてこなかった感情」がある時なんです。

感情は本音を運んでくるメッセンジャーの役割があります。

だから、そのメッセージを受け止められた時、昂る感情も落ち着きます。


ちょっと遠回りに感じるかもしれないのですが、話をちゃんと聴けたら同じような感情の昂りは減ってきます。

それはその場しのぎではなく、今後の対応力を上げていくことにつながります。

3、言葉を用意する

言いにくい話を伝える時「どんな伝え方しようかなぁ」って迷いますよね。


自分の話を上手に聴けて、目的が整理できると自然と

「こんな表現にしたほうが良いのでは?」とか

「ここは相手の意見を聞いてから伝えよう」とか

アイデアも浮かんできます。


不思議なんですが、言葉を用意するのは実は簡単なんです。

言いにくい話をストレスなく伝えるための事前準備は、

感情の整理が9割

です。

亀裂を生まない3つの伝え方

ここからは、さらに伝えやすくする3つのコツをご紹介します。

伝えにくさを正直に伝える

素直な言葉は相手に届きます。

言いにくい話をするときは、いっそのこと、その気持ちを伝えてしまうのはどうでしょうか。

「ちょっと言いにくいんだけど」から始めると伝えやすくなりそうな気がしませんか?

事実を中心にする

事実と自分の判断ってよく混ざってしまいます。

期日に遅れてばかり、遅刻ばかりだと「この人やる気がないのでは?」とか「常識がないヤバいやつなのでは?」とか、思ってしまいますが


事実:遅れていること

判断:やる気がない、非常識なヤバいやつ


になります。

「やる気ある?」みたいに判断を話題にしちゃうと話がうまく進まなくなります。

例えば「先日、10時過ぎに到着してたけど」「この間お願いした仕事依頼から1週間ぐらいで提出してくれましたよね」など事実を確認しながら進めると相手も受け取りやすくなります。

自分も相手も大切にできる アイメッセージ

アイ( I )メッセージは、「私は〜」という形で自分の感情や考えを伝える技法です。

「あなたは〜」という表現だと責められたように聞こえやすいですが、「私は〜」と伝えることで相手の心理的な負担を軽減できます。

これは、けっこう印象変わります。


例えば、部下のミスについて話す時

Youメッセージ :「あなたはいつも確認が甘い」

アイ( I )メッセージ :「確認の段階でもう少し慎重に進めてもらえると嬉しいです」

印象が違うと思うんですが、どうでしょうか?

「相手を傷つけてしまうかもしれない」という不安を感じる方にとって、アイ( I )メッセージは特に効果的な技法と言えます。

自分の気持ちを率直に伝えながらも、相手を否定することなく建設的な対話ができるようになります。

相手の顔色が気になる時の境界線チェック

  • 相手が傷つくと自分のせいだと思ってしまう
  • 相手が怒ると自分が悪い気がする

と感じやすい人は、境界線が曖昧なのかもしれません。

境界線って聞いたことありますか?

境界線とは?

人の家に勝手に入ったりしないし、自分の部屋に土足でズカズカ入られたら嫌ですよね。

物理的に自分のスペース(家や部屋)があるように、心にも自分のスペースがあります。

心のスペースには、自分の考えていること、感じていることがあります。

相手の心のスペースと自分の心のスペースを分けるのが境界線です。


相手がどう感じるかは、相手の心のスペースの問題であり、本人だけのものです。

だから、相手の感じていることを変えたり、否定することはできません。

相手がどう感じるかは、本人の自由です。


例えば、

打ち上げ花火を見て

「きれいだな」って感じるのも

「うるさい」って感じるのも

相手の心のスペースで起きていることであり、本人の自由です。

それを他人が変えることはできません。


もちろん、自分が打ち上げ花火を見て

「きれいだな」って感じるのも

「うるさい」って感じるのも

自分の自由で、他人が変えられるものではありません。


相手が感じてることは相手のスペースのこと

自分が感じていることは自分のスペースのことです。

そのどちらも共存させるために引いた見えない線が境界線です。


境界線を引くと

相手が感じていることも

自分が感じていることも

同じように大切にできます。


自分も相手も大切にするのが境界線の役割です。


ちなみに、アイ( I )メッセージにすると伝えやすいのは

主語をつけることで相手のスペースに勝手に入らない、相手の感覚を尊重した言い方になるからです。

相手の感情の責任は持たなくていい

打ち上げ花火の感じ方を他人が変えられないように

それをあなたがコントロールすることはできません。


相手の感情は、あくまで相手自身のものです。

だから、相手の感情にあなたが責任を持つ必要はないのです。


相手が怒っているときも

不機嫌なときも

それは相手の感じ方だから「自分が悪いのかな?」って感じる必要はないです。

あなたが悪いわけではありません。


わかっていても、自分のせいかなと思ってしまう

相手の顔色が気になってしまう


なんて時があれば、境界線を確認するタイミングかもしれません。

境界線のつくり方

境界線がある時は「私」と「相手」がいます。

境界線が曖昧になる時は「私」が消えてしまいます。


「こんなこと言ったら、どう思われるんだろう?」

って思う時、考えているのは相手のことでした。

そこに「私」はいませんでした。


境界線をつくるおすすめの方法は、まず自分の気持ちをよく聴くことです。

「私はどう感じたか」

「私はどうしたいのか」

日常の中で自分の気持ちを聴く練習をすると、自分の心のスペースが確固たるものになります。

自分のスペースが大切にできると、境界線が引きやすくなります。

境界線を感覚的に掴むことで「言いにくい」って感じること自体が減ってくると思います。

伝えた先にある、やさしい世界

私は飲食店でマネージャーをしていたんですが、言わなきゃいけないのはわかってるんだけど、口うるさい人になりたくなくて、言えなかったことがたくさんありました。

「一生懸命やっているのはわかっている」

って時

「こんなこと伝えて細かいって思われるかな」

「嫌われるんじゃないかな」

と気になってしまったり


「伝えることで、相手は傷つくんじゃないか」

とか心配になったりしてました。


一方で、イラっとしてしまうことも多かったです。

仕事が想像よりも遅かったり、ミスが多かったりすると

「どうしてできないんだろう」

「何回言ったらわかるんだろう」

と相手を責める気持ちが湧いてきてしまいました。


イラっとした時は

「怒りに任せて相手に伝えても相手との関係性が崩れるだけだ」

と思ってぐっと我慢するのですが、イライラするのを止められるわけではないので、すごくストレスでした。

我慢してたけど、顔に出てたんじゃないかなぁと思います。


でも、上手に伝えられたときに、相手との仲が深まったり、信頼関係が深まったりするのも感じてきました。


あるときは、

「そんなことで困ってたんだ」

って初めて知ることがありました。

相手の仕事の仕方にイライラしていても、相手の事情や気持ちが理解できると、今まで許せなかったことが許せるようになりました。

自分の器が広がった気がしました。


あるときは、

「この人はこんな気持ちだったんだ」って知りました。

それまで見えていなかった相手の優しさを受け取ることもありました。



何よりも自分の話を聴くことで、自分に優しくなりました。



自分の話を聴いた優しさは、相手の話に耳を傾ける優しさになったし

自分を受け入れた分だけ、相手を受け入れられるようになりました。



言いにくいことを伝えた先にある世界は、今よりもずっと、やさしい世界です。

「言いにくい」を超えて、やさしい世界を体験できることを応援しています。

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この記事を書いた人

Shioriのアバター Shiori 感情カウンセラー/ヒーラー

感情カウンセラー/ヒーラー

海辺の街で暮らしながら、心のお話を発信したり、ワークショプをしています。

季節の食材でお菓子を作ったり、歌うのが好きです。

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