はじめに
小さい頃には、「おとーさーん!」と、父親の後を追いかけて歩いたり、手を引かれていろいろなところへ連れて行ってもらったりという思い出を持つ人は少なくないでしょう。しかし、成長と同時に父親に対する感情が変化し、態度までもが急変することがあります。
口答えをする程度であれば、まだ可愛い対応かもしれません。しかし、こうした日常が繰り返されることで、父親との関わりを極端に避けたり、無視をするようになる人は少なくないようです。なぜそこまで悪化してしまうのか尋ねると、「めんどくさいから」という言葉が出てきます。
子供の立場からすると、「余計なアドバイスや意見を押し付けてきたり…」、「父親の自己中心的な考えで、乱暴に扱われている…」、「成人しているのに、大人として認められていない…」等々の理由から、父親との関係を面倒に感じたり、嫌に思っている人も多く、中には「仲良くしたくても、自分の意見を聞いてもらえないから、あきらめた…」と話す人もいるようです。
父親という立場でも、子供という立場でも、他人であることには変わりませんから、考え方や感じ方が違うのは当たり前でしょう。しかし、子供の立場から言わせれば、父親に一方的に抑えつけられているような嫌悪感を感じずにはいられない状況なのかもしれません。
今回は、漠然とした「嫌い」という言葉の裏側にある原因がどこにあるのか考えつつ、父親との関係について見直し、自分自身の今後の生活においてどのように対処していけばいいのか考えてみたいと思います。
嫌いな父親の特徴

幼いときから子供と一緒に過ごす時間が長い母親と比べて、父親の場合はそもそも子供に対する役割や立場が違うと考えることができるかもしれません。普段は子供の教育には口を出さない父親でも、大事な場面では母親から「お父さん、ちょっとは言ってやってください!」と頼まれ、望まずとも父親として嫌われ役を引き受けることになることもあるでしょう。そういったこともあって嫌われやすいのかもしれません。
子供に嫌われる父親について、どのようなタイプが嫌われてしまうのかから、考えてみたいと思います。
頑固な父親
大人になっても「うちの父親は頑固者で…困っちゃう!」という人は多いでしょう。むしろ、親子関係になにも問題なく円満家族という人の方が、もしかしたら少ないのかもしれません。
昔は「男に二言はない!」という言葉が美徳とされていたように、昔気質の男性であれば、一度言ったことは絶対に譲らない、曲げるべきではないと、内容や状況に関係なく、観念的に頑張っていることもあるようです。
思春期の子供からしてみれば、頑固で頑なな父親の態度は頭にきます。思春期といえば、さまざまな葛藤があり、自分の気持ちを探している不安定な時期でもあります。そんなときに、頭ごなしに自分の考えを否定され、意見を強引にねじ伏せられては、子供が反発することは、簡単に考えつくでしょう。
そのような状況で、明らかに父親に間違いがある時でさえ、改めずに自らの非を認めないとなれば、子供は反発どころか、父親に対して幻滅することにもなりかねません。
素直に「ごめんなさい」、「ありがとう」を言えない姿が、嫌われる理由なのかもしれません。
威圧的な父親
一家の長として、ある程度の威厳をもつことは良いことですが、あまりにも「威圧的」になってしまったら、子供は居心地の悪さから、父親の存在を避けるようになります。
「誰のおかげで食べていけると思ってんだ!」、「父親に向かって、その言い方はなんだ!」、「黙っていう通りにしろ!」等々、常に上から目線で子供に接していると、親子であろうと信頼関係を作ることはできません。そのうえ、威厳を見せようと怒鳴ったり短気を起こしたりしようものなら、ますます嫌われてしまいます。
子供が男の子の場合、ある年齢になると父親に対して、徹底抗戦を挑んでくるかもしれませんが、完膚なきまでに親に負けてしまうと、劣等感や敗北感に苛まれ、父親を嫌悪するようになる可能性があります。
父親の人としての弱い部分やソフトな部分が見えない、隙のない感じが嫌われたり、遠ざけられる原因なのかもしれません。
母親を大切にしない父親
子供は、大人のことをよくみています。両親のことはなおさらです。なかでも、父親が母親を大切にしているかどうかは、子供にとって重要な問題です。
たとえば、父親が仕事や趣味に時間とお金をかけて、家庭のことは母親に任せっぱなしにしている状況や、母親に辛くあたっている状況を見せようなら子供は父親に対して良い感情を持つことはできずに、恨んだり憎んだりするようになる可能性があります。
また、外に出ればニコニコと愛想のいい父親なのに、家の中では終始機嫌が悪く母親を怒鳴り散らしている姿を見せようなら、子供に不信感を持たせることにもなります。
正義感の強い思春期の子供は二面性のある人を嫌う傾向があることから、家の外と中とで使い分ける父親に対して不信感を抱き、嫌いになってしまうこともあるでしょう。
嫌われた父親の心うち

父親が「嫌い!」、「関わりたくない」、「会いたくない!」と話す子供は少なくありませんが、一方で、嫌われた父親の心うちは、どうなっているのでしょう?子供に嫌われてしまった父親側が抱いている本心を考えてみたいと思います。
嫌われた理由がわからない。
子供の立場から、父親に対して、「おとーさんの、ここが嫌い!」という話を切り出されることは、まず、ありません。そもそも、こうした親子の会話が成り立っていれば、対処のしようもありますが、複雑な思春期ゆえ、たいていは解決のチャンスを逃していることでしょう。
子供に嫌われてしまった父親は「自分の何がいけなかったのか」、「自分の性格に悪いところがあったのだろうか」と思い悩みつつも、その理由はわからないまま、大きなストレスを抱えることも多いようです。
接し方がわからない。
子供が父親を嫌う気持ちは、はっきり言わなくても父親に伝わります。「自分は子供に嫌われている」と感じた父親は、今後どうやって子供と接したらいいのか悩み、子供との距離を縮めようにもうまくいかないことが増え、どうしていいのかわからずそのまま子供が大人になることもあるようです。
「子供から嫌われようが気にしない」という父親もいますが、心優しい父親であればあるほど、再び子供と仲良くするために、あれこれ思い悩んでいることもあるようです。
これ以上、嫌われたくない。
自分の子供に嫌われていると知り、「今後はもっと子供との会話の機会を増やそう」と考える父親もいますが、「これ以上、子供に嫌われるのが怖い」という気持ちから、子供との関わり合いをつい避けるようになる父親も少なくありません。
特に子供を大切に思う父親ほど、子供と正面から対話して大きなトラブルになってしまうことを恐れて行動をおこしそこないます。本当は関係を戻したいけど、嫌われる恐怖から距離をおいてしまうのです。
父親嫌いを解消する方法

父親の心うちを知ったところで、「父親が嫌い」という感情が、簡単に変わるわけではないでしょう。ただ、後々のことを考えたり、家で過ごす時間をより良いものにしようと思うと、父親との関係に関する問題をそのままにしておくことは難しいと思います。
ここからは、父親嫌いを解消する方法について、いくつか取り上げていこうと思います。
父親がいなくなったら…と考えてみる。
どれだけ自己中心的で、嫌いな父親であっても、いざ父親がいなくれば悲しい気持ちになったりするものです。「父親が嫌い」、「父親なんていなくなればいい」と考えてしまう時に、実際に父親がいなくなった時を想像してみてはいかがでしょう。
どんなに嫌な父親であっても、存在がなくなることで少しは“寂しさ”を感じるかもしれません。その後は、「父親がいなくなると悲しい」という思いから、これまでより父親に優しい態度を取れるようになるかもしれません。
父親もひとりの人間…と考えてみる。
子供の立場からすると、これまで育ててくれた父親に対して、「父親」であることを求めて、過剰な期待を抱いてしまいがちです。しかし、父親もひとりの人間です。神様でも仏様でもないので、家事や育児、仕事を完璧にこなせるはずがありません。
嫌いという意識が働けば、自然と父親の欠点ばかりが目についてしまいます。しかし、そうした時こそ、「父親も人間だから、欠点があって当たり前」と思い直すようにして、嫌な気持ちを落ち着かせてみてはいかがでしょう。
父親に感謝すべきことを、紙に書いてみる。
どんなに仕事人間で、育児に関わらない父親でも、どこかに子供の成長のために頑張ってくれていた場面があるはずです。「父親が嫌いすぎる」というときは、父親に対して感謝すべきと思われることを紙に書き出してみてはいかがでしょうか。
これまで父親が自分のためにしてくれたことを意識できれば、父親のいい面が見えてくるため、父親に対する見方が変わってくることでしょう。
母親や、父親側の祖父母に相談してみる。
「父親が自分にだけ辛く当たってくる」、「父親が自分だけ無視してくる」という場合、父親と直接話し合うことはできないので、関係は改善しません。
そのような時には、母親や、父親側の祖父母に相談してみてはいかがでしょうか。「今後、父親とどのように接していけばいいのかわからない」という内容をきっかけに、色々と相談してみてはどうでしょう。
もしかしたら、具体的な対応策を聞けるかもしれません。また、父親の態度があまりにもひどいようであれば、母親や祖父母から父親に話をしてくれるかもしれません。
離れて住むことを検討する。
いろいろと試してみたけど、うまくいかないと感じるのであれば、父親と距離をおくのもひとつの有効策でしょう。残念ながら、どうしてもダメな場合もあります。
特に、嫌いな父親と同居している場合、嫌悪感を拭うことがきれずに、日常的にストレスを抱えている状況ですから、心身共に状況が悪くなっていくことが考えられます。こうしたことになる前に、父親と離れて暮らし、自分ひとりの時間をしっかりと確保できるような環境を整えてみてはいかがでしょうか。
さいごに

周囲を見渡してみると、「父親に会いたくない」、「父親を尊敬できない」、「父親を好きになれない」と感じている人はそれなりにいるものです。しかし、そう感じている人の中に、「父親と仲良くしたい」と願っている人も少なくないでしょう。
家族だからこそ、父親嫌いを解消して、自分自身も好きになろうと努力している人も多いと思います。一方で、「家族である父親を嫌う自分はおかしい」というように、自分を過剰に責め立てる人もいるようですが、焦って直そうとしても、これまで我慢を重ねて、耐え忍んで、溜め込んできた不満や嫌悪感はすぐに解消できるものでもありません。
父親に対して拒否感をなくしたいと思うのであれば、父親嫌いの原因を見つけたり、父親のこれまで見ていなかった部分を探したりして、今後どうしていきたいかを、自分なりに考えてみることをオススメします。
「3、父親嫌いを解消する方法」を参考に、自分なりに行動してみてはいかがでしょうか。