ひといちばい敏感なHSCの子育て、親育ち

  • 周りの人の気持ちに敏感で傷つきやすい
  • 新しい環境に馴染むまでは用心深く、慎重に行動する
  • 少しでも服が濡れたり砂がついたりするとすぐ着替えたがる
  • 匂いや大きな音などの強い刺激に敏感で、圧倒されやすい
  • 選択や決断に時間がかかる

このような性質を持ったひといちばい敏感な子どもを、心理学の用語でHSC (Highly Sensitive Child )と呼び、HSCは子ども全体の約20%(5人に1人)程度存在すると言われています。

HSCは、豊かな感受性を持ち洞察力に優れる反面、神経質で心配性と見られがちな性質を持ち、他の子どもたちと同じペースで行動することに困難を感じることが少なくありません。

そういったHSCの性質を親が理解したり受け入れることができず、子どもを大人や社会の期待通りに行動させようと無理に力をかけてしまうと、HSCの心はさらに萎縮し、時には心的外傷(トラウマ)となり人生に願わない影響を与え続けることになっていきます。

近年耳にするようになった「毒親」とは、子どもの人生に害のある影響を与える親のことを表す概念です。

身体的または性的な暴力を加えたり、必要な養育を怠るネグレクトを行うような行為はもちろんですが、「しつけ」や「教育」という名目で、気づかぬうちに子どもの尊厳を侵したり、無価値観や自己否定感を子どもの心に植え付けるような言葉や態度、子どもへの過度な期待や干渉によってコントロールすることも、「心理的な虐待」として子どもの人生に深刻な害を及ぼしていきます。

後者のような「心理的な虐待」は、ほとんどの場合親自身も無自覚で行っていて、それを「毒親的な行動」とは認識できないため、子どもが成人した後まで長期にわたって繰り返されます。

それが心的外傷となって子どもの人生を息苦しいものにするなどのマイナスの影響を与え続けたとしても、子ども本人でさえその本当の原因に気づくことのできないまま「生きづらさ」に苦しみ続けてしまうことになっていくのです。

繊細で特に傷つきやすい性質を持ったHSCにとっては、親としては「子どものため」と信じてやっていることでも、本人にとっては強いストレスとなっていることが多く、より注意が必要です。

この記事では、HSCのように敏感な子どもにとって「毒親」となりうる言動についてフォーカスし、幸せで健全な親子関係を築くための改善策についても触れていきます。

この記事の目次

HSC毒親診断チェックリスト

HSC毒親診断チェックリスト

子どもの頃の傷つく体験や、満たされなかった欲求によってできるトラウマのことを、心理学用語でインナーチャイルドと呼びますが、インナーチャイルド(心の傷)の大きさや深さは、「出来事そのもの」の客観的な深刻度というより、本人の「受け取り方」に依るものが大きいと言われます。

つまり同じ出来事を体験したとしても、その子どもの捉え方によって、「心の傷」となってしまう子どもと、そうでない子どもがいるということです。

  • 子どもの自尊心を傷つける言動
  • 有無を言わせない高圧的な態度
  • 感情的で一方的な言葉や態度による攻撃

こういったものは世の中の親子関係においてはごく一般的に見られるものですが、HSCにとってはこういった大人の態度が、容易に「心的外傷」の原因となってしまいます。

より深く感じてしまうHSCにとっては、他の子どもにとってはなんでもないような些細な出来事にもショックを受けたり、深く心を痛めることがあり、そういった意味でインナーチャイルドも大きくなりがちです。

親がついやってしまいがちな「毒親的言動」には具体的にどんなものがあるのか、以下がチェック項目となりますので、当てはまるものがどのぐらいあるか自己診断してみてください。

  • 「あなたのことを思って・・」と子どもに言うことがある
  • 子どもの選択を否定したり無視することがある
  • 自分の考えや価値観を一方的に押し付けてしまっている
  • 泣いたり怒ったり甘えたりする子どもの自然な感情の表現が我慢できない
  • 「お姉ちゃん(お兄ちゃん)なんだから・・」「男の子(女の子)なんだから・・」といった言葉を使う
  • 「〇〇しなさい」と言うように子どもには常に命令口調
  • たとえ自分が間違っていても、子どもに対して謝ることができない
  • 自分の勝手な期待またはコンプレックスから子どもに習い事をさせている
  • 「だれが産んだ(育てた)と思っているの?」など恩着せがましいことを言ってしまう
  • 「みっともない」「頭が悪い」「可愛くない」など子どもに否定的な言葉がけをすることがある
  • 子どものことより自分の欲求を優先させることが多い
  • よそのうちの子や他の兄弟と比較して「それに比べてあなたは・・」と言うことがある
  • 感情的な言葉や暴力、または態度で、子どもをコントロールすることがある
  • 子どもの本当の気持ちを尋ねたり寄り添うより、自分の意見を言ってしまう
  • 子どもの身の回りの世話をいつまでもしている
  • 子どもの交友関係や嗜好、夢などに口を出す
  • 「産まなきゃよかった」「言うこと聞けないなら出ていきなさい」「ほらママの言う通りでしょ」など、子どもの尊厳を傷つける言葉を使う

またこれ以外にも、HSCの場合は「他の子はできるのに、どうしてあなただけ・・」など、他の子の感覚やペースに合わせなければならないようなメッセージを投げかけたり、本人が1人でいることを好むことを否定するようなこともまた、子どもの自尊心を傷つけ、子どもがありのままの自分を否定する思いを持つ原因にもなってしまいます。

毒親に育てられたHSCの将来

毒親に育てられたHSCの将来

さて、上のような親の言動または態度によって繊細なHSCのインナーチャイルドが大きくなってしまうと、将来的にどのような影響を与えるのでしょうか?

親の圧力やコントロールによる幼少時の心の傷(インナーチャイルド)が大きい人に見られる特徴としては、以下のようなものがあります。

  • 自尊心が低い
  • 自己イメージが低い
  • 逃避的
  • 依存傾向が強い
  • 自分の本音を隠す
  • 自信がない
  • 罪悪感が強い
  • 幼少時から押し込めた感情が、仕事や結婚生活や子育てで再現される
  • 完璧主義で息苦しい
  • 人の目や評価が常に気になる
  • マイナス思考
  • 寂しさや空虚感に悩む
  • 良い人でいようとして、嫌なことにもNOを言えない
  • 自分がわからない
  • 人から認められたい欲求が強い
  • 感情がコントロールできない
  • 不安が強く疑い深い
  • 自己犠牲的

つまりある程度以上インナーチャイルドが大きくなってしまうと、HSCの個性(ギフト)である繊細さや洞察力の深さなどのプラスの面を才能として生かし、社会に自然と役立てていくことが難しくなるばかりか、「生きづらさ」を感じながら苦しい人生を送り続けることになってしまいます。

毒親はなぜ生まれるのか?

毒親はなぜ生まれるのか?

そもそも本来は幸せな人生を願うはずの子どもに、無自覚とはいえ「毒親的な言動」をとってしまう本当の原因は何でしょうか?

結論から言うと、子どもをコントロールしたり傷つけてしまう親子関係においては、親もまた心に多くの「傷ついたインナーチャイルド」を持ち、癒されることがないまま心に眠らせてしまっている、ということが考えられます。

  • 親自身が小さい頃に本当の気持ちを抑圧している
  • 親自身が自分の価値を感じられていない
  • 親自身が「生きづらさ」を抱えている
  • 同じことを自分の親にされている

インナーチャイルドは、放っておくと世代間で連綿と引き継がれていきます。毒親的な行動の根っこには、親自身の幼い時の「心の傷や痛み」が隠されているのです。

親が自分の心の傷や痛みから目を逸らすため、子どもの行動を自分の思い通りに無意識にコントロールしようとしてしまうことによって、「毒親」が生まれます。

もし小さい頃に親の愛情をいつでも欲しいままに感じられて、「あなたが大切だよ」「大好きだよ」「信じているよ」「認めているよ」というような心地よい言葉や態度で充分に接してもらうことができていたとしたら、大人になってからも自己否定や無価値観に苛まれることはなく、ありのままの自分で自由に生きることは難しいことではないでしょう。

残念ながら、現実的にはこのような理想的な生育環境で育っている人は多くはありません。

毒親とは、自分の価値を自分で認めることができない痛みを紛らわすために、子どもの人生をコントロールしようとしてしまうあり方です。

子どものためにという名目で、自分の欲求を子どもを使って満たそうとしているということなのです。

敏感なHSCにとって毒親にならないためには、幼少時に感じることがつらすぎてしまい込んだ「自分自身の繊細で傷ついた心」にもう一度向き合い、未解決の感情を癒すことが必要となります。

繊細なHSCにインナーチャイルドを作らない子育てのためには、まず親が自分のインナーチャイルドを癒し、トラウマの世代間連鎖をきちんと切ることが、子どもの幸せな人生を作るもっとも効率的な方法なのです。

まとめ

「毒親」の問題は、自己中心的な親のあり方によって子どもの人生を制限するということにとどまりません。

子どもに自分の問題を投影して自分の痛みから目を背け続けるということは、自分自身の人生も同時に制限し続けるということになってしまいます。

感受性の強いHSCの子育てにおいては、より親の内面にある不調和な部分があぶり出されやすいものです。

人と同じようにできない、うまく集団に溶け込めないなど、HSCの行動が、親のインナーチャイルド(不安感や恐怖、自己否定感)を刺激しやすいということです。

そのような、一見子どもの問題と思えるようなものから「自分が幼少時に閉じ込めた感情」や「不要な観念」に気づいて、癒したり手放していくことができたら、それがHSCが親にもたらしてくれるギフトであることに気づくでしょう。

繊細に物事をキャッチするHSCは、親の変化にも敏感です。親の変化に連動するかのように子どももダイナミックに変化します。

HSCの子育てを通して、自分の中の「傷つきやすかった小さな自分」に丁寧に向き合って少しずつ癒すことで、子どもの人生と自分の人生が、ともに軽やかで自由な方向へと向かっていくでしょう。

HSCの子育てと親のインナーチャイルドの癒し方については、こちらの記事も参考にしてください。

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この記事を書いた人

石垣島在住。
感受性が強く生きづらさを感じるエンパス/HSP専門カウンセラー。
電話でのインナーチャイルドヒーリング&カウンセリングのほか、エンパスさんのQOL(人生の幸福度)向上をサポートするさまざまな活動をしています。

\エンパスさんのためのお役立ち情報発信中/
note:https://note.com/muera_note
HP:https://muera.jp

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