アダルトチルドレンは「失敗」に囚われやすく、「失敗体験」を活かしにくい

「あ~、またやってしまった。」
「どうしよう。またあの人に嫌な顔される…」

仕事をしていれば、誰でも多少の失敗はあるもの。

そんな様々な「失敗体験」にしっかり向き合えれば..
今後の改善や発展に活かせるかもしれません。

しかし逆に様々な「失敗体験」に囚われしまう。

「自分を責める気持ち」や「後悔の念」を強く持ち過ぎてしまうと、「失敗体験」はただの「痛い体験」に終わりがちです。

そしてこの「過去の失敗に囚われやすい傾向」は子ども時代の親子関係が発端になっていることが多いのです。

1.私自身が「失敗」に囚われ、「失敗体験」を活かせないサラリーマンだった


随分前のことですが、私はある通信会社で営業をしていました。

担当は消費者向けの金融機関。

当時は新規出店が多く、オンライン用回線の申し込みを大量に受けるものの、膨大な書類処理と社内調整が追い付かず連日残業。

それでも処理が追い付かなくなり、次第に処理漏れや調整ミスも出てきます。
そしてそのフォローで更に忙しくなる「悪循環」に陥りだしたのです。

そんな時に起こしてしまった「失敗」。

納期を見落として、オンライン回線がお店の開店準備に間に合わず、客先から強いクレームを受けたことがあったのです。

原因は自分自身のミス。
誰のせいにも出来ず、とても辛かった…。

この失敗を糧(かて)として、
「納期」という大事な情報を見落とさず、しっかり対応できるよう、心掛けられれば良かったのですが..。

でも当時の私は
「なんて馬鹿なことをしてしまったんだ」という自分を責める気持ち
「また人からひどく怒られたらどうしよう」という恐怖
に囚われてしまい、自分の仕事に集中できなくなってしまったのです。

そして、かえって大事な情報をすっ飛ばしてしまうようになり、同じミスを何度か繰り返してしまったことがありました。

でもこんなこと。

自分だけでなく、アダルトチルドレンが体験しがちなことなのかもしれませんね。

 

2.子どもが何かを身につけるには失敗も必要

小さな子どもは
「経験不足」
「知らないこと」
「出来ないこと」
だらけです。

親の助けなしにはやれないことがいっぱいある。

例えば、小学1年生ぐらいであれば
・簡単な漢字が読めない、書けない
・簡単な計算(掛け算など)ができない
・(人と接する時)敬語や丁寧語が分からない
などがあるでしょう。

これらを覚えて自分で使えるようになるには、時間がかかります。

当然、勘違いや失敗もたくさんある。

そういった学びと失敗のプロセスを経て、徐々に身につけていきます。

しかしその際、子どもの数々の失敗に対して、親がどう接してきたか。

これが子どもの「失敗に対する捉え方の原型」を作っていくのです。

3.「子どもの失敗」に対して自分の親はどう対応したか

一般的に、子どもの性質は自由奔放です。
(もちろん、いろんな子どもがいますが..)

時と場所によっては「ワガママ」「気まぐれ」「自分勝手」にもなる。

そのままでは、周りの子どもと人間関係をうまく構築できないこともあるでしょう。

また「読み書き」などの知識やスキルも、成長に伴って必要になるでしょう。

そのため
親が子どもに適切な「社会性」「知識」「スキル」などを身に着けさせることは必要不可欠です。

しかしその過程で、子どもが経験する数々の失敗を親がどう対応したのか。

この記事の目次

【1】「失敗」へのサポートが機能している場合

親が精神的・感情的に安定していて、気持ちに余裕がある。
そして、子どもの失敗を温かく見守り、必要に応じて手を貸す。

失敗を糧(かて)として活かせるよう導かれた経験。

こういった体験が多ければ多いほど、子どもは失敗を必要以上にネガティブなものだと捉えないでしょう。

【2】「失敗」へのサポートが機能していない場合

しかし逆に
親が精神的・感情的に不安定で、気持ちに余裕がない。
子どもの失敗をひどく叱責する。
時にはやろうとしていることを取り上げてしまう。

こういった体験が多ければ多いほど、子どもは失敗を過度にネガティブに捉えてしまう。

ただ、どんな親でも完全はありません。

普段は心優しく愛情あふれていたとしても、
時には感情的になって、子どもに接してしまうもの。
あとで「失敗したな~」と思うことは、どんな親でもあります。

しかし
子どもの失敗に対して必要以上に厳しく当たってしまうこと。
これが何度も執拗に延々繰り返されると、子どもは失敗を極度に恐れるようになります。

特に
・子どもに対して「過干渉」の傾向がある親。
・自身の親から叱責や否定感ばかりを植え付けられてきた親。
・経済的な問題、夫婦関係の問題などを抱えて不安定な親。
など

こういった親元に育ったのであれば、子どもの失敗に対する捉え方が、極端にネガティブになる可能性があります。

そしてこの「失敗に対する捉え方の原型」が、大人になっても作動し続けることになるのです。

4.「子どもの頃の体験・原型」が「仕事の場面」で作動する

社会人になって間もない頃は、まさに小さな子どもと同じ
「経験不足」
「知らないこと」
「出来ないこと」
だらけです。

最初は、先輩や上司の助けなしにはやれないことがいっぱいある。

例えば、
・自分が受け持つ仕事に関する知識がない
・社内、社外の人と接した時の立ち振る舞いがよく分からない
・他部署との連携など社内の様々なルールが分からない
などがあるでしょう。

テーマによりますが
これらを覚えて自分で使えるようになるには、それなりに時間がかかります。

当然、最初は勘違いや失敗もたくさんある。
そういった学び、多少の失敗のプロセスを経て、徐々に身に着けていきます。

しかしその際、自分の失敗をどう捉えるのか。

ここで子どもの頃、親子関係の中で無意識のうちに身に付いた
「失敗に対する捉え方」が無意識のうちに作動するのです。

子どもの頃、親から失敗を執拗に責められていた人であれば、仕事で経験する様々な「失敗体験」に囚われしまう。

そして「自分を責める気持ち」や「後悔の念」などが大きくなる。
「失敗体験」はただの「痛い体験」になりがちです。

失敗をなかなか直視できず、次に活かせないので、繰り返してしまう可能性もあります。

こうするうちに、人よりも「生きづらさ」を抱えやすくなってしまうのです。

5.無意識のうちに身に付いた「失敗に対する捉え方」 どうやって変えるか

では、この「失敗に対する捉え方の原型」が自分を苦労させたり、苦しめている場合、どうすれば良いのでしょうか?

影響を少なくし、改善するには下記にようなことが必要です。

【1】自分のクセ・パターンを見つめる

まずは自分はどんな「失敗に対する捉え方のクセ・パターン」を持っているのか、見つめることが大事です。

人と比べて「自分はネガティブ過ぎる」とどこかで思っていると、それを認めるのは結構難しいかもしれません。

現状を見つめることが
時には悲しみや劣等感を感じることにつながるからです。

しかし現状を見つめること無しに、改善はあり得ません。

すこし痛い失敗をした時、行き詰ってしまった時。
そんな時こそ現状をしっかり見つめ、改善に向き合える大きなキッカケとなりやすいのです。

【2】「失敗に対する捉え方の原型」が出来た経緯を探る

自分の親は子どもの失敗に対してどのように接していたか、振り返ってみましょう。

すぐに浮かばない場合は、逆に上手くやって親から褒められた時のことを振り返ることも有効です。
記憶に対する一種の「揺さぶり」が起きて、明確に思い出しやすくなることがあります。

ずっと昔のこと、子ども時代を振り返るのは思ったよりも大変かもしれません。

特にその体験にまつわる感情が悲しみなどのネガティブなものであれば、なかなか向き合いにくいかもしれません。

そんな時、人によっては文章にしてみるのも良いでしょう。
文章にすることによって、その体験が自分と切り離れ、感情に囚われにくくなるからです。

また友人やパートナーに話しを聞いてもらうのも有効です。
信頼できるカウンセラーなど第三者に協力してもらうのもいいでしょう。

【3】原因にまつわる感情をできる限りクリアにする

過去の出来事に向き合いにくい。

その大きな理由の一つは、
その出来事にまつわるネガティブな感情が自分が思っているより大きいことです。

悲しみ、孤独感などの感情。
誰もがあまり味わいたくないもの。

だからこそ、子ども自体のネガティブな想いや感情が封印されたままになっていることも多いのです。

子どもの頃に封印してしまったネガティブな感情をちゃんと見てあげる、感じてあげることが有効です。

誰か信頼できる人に話しを聞いてもらう、しっかり受け止めてもらうことは、感情をクリアにする点でも有効です。

ただ感情については、相手が精神的・感情的に安定していないと、お互いが絡み合ってしまい、かえって泥沼にはまってしまうこともあります。
できるだけ、心理的に安定感のある人に相手をしてもった方が良いでしょう。

 

まとめ

自分の仕事のクセが実は子どもの頃の親子関係にあったと認めること。

これは意外と難しいものです。

私自身もそうでした(笑)

大人になって直面する「目の前の課題」と親子関係という「過去の出来事」。
時間的には相当離れているので、関係があると思えなかったり。

また子どもの頃の悲しい体験や感情的な痛みをまるで無かったものとして、今を頑張ることで乗り切ろうとする。

そうすると、過去の本当の原因に目が行かなくなってしまい、問題が起きてもなかなか抜け出せないこともよくあります。

過去に目を向けることは決して後ろ向きなことではありません。

現在を明らかにし、未来を変えていくことにつながるのです。

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この記事を書いた人

アダルトチルドレン回復研究所 代表

高校1年の時、親子関係に悩みすぎて病気になり、胃の3分の2を摘出。その後小さな胃で生きる。
会社勤め(通信会社の営業、CSRコンサル)、病院勤務(心療内科の心理カウンセラー)を経て研究所を設立。
アダルトチルドレンからの回復に関する研究・啓発。カウンセリング、トラウマ解消ヒーリングの提供などを行なう。


HP:https://ac-recovery-lab.com

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