アダルトチルドレンがパワハラの「加害者」になるリスク

職場でパワハラを受けるのはとてもツライことです。

機能不全家族で育ったアダルトチルドレン(AC)はパワハラの「被害者」になるリスクが高い。

自信がなかったり、他人と関わるコミュニケーションの力が弱いと、パワハラの餌食になってしまう可能性が高くなってしまいます。

それだけではありません。

ACはパワハラの「加害者」になる潜在的なリスクも高い。

ACはパワハラの「被害者」「加害者」そのどちらの当事者にもなるリスクがあるのです。

この記事の目次

1.パワハラに翻弄された私

私自身、パワハラにあっていたことがあります。

会社に勤めていた頃。
上司から精神的な苦痛を受け続け、うつ状態になっていたのです。

その上司は一見、人当りの良い人。
社交性もあって外面(そとづら)は良い。

でも部下にはひどい言動、圧迫言動を繰り返す人だったのです。

上司が立場上、部下に仕事を命じ、その遂行に向けて働きかけるのは当然のこと。

ただそれは職務上の必要性を超えたものでした。

打ち合わせや会議の場で
「お前、どうするんだ?この成果で。」
「〇〇なんて簡単だろ。なぜ出来ないんだ。」
といった発言を繰り返す。

同じ言葉でも口調やその場の雰囲気によって随分印象は変わりますが、私はその言動に随分やられていました。

「なんて俺はダメなんだ…」と自分を否定する気持ち。
「なんとかしなかきゃ」と焦る気持ち。
こんな想いが強くなって、精神的にすごく不安定になっていました。

すると、仕事が手につきにくくなって、ミスも増える。
そうなると更にその上司から叱責を受ける。

ますます自己否定や焦りが強くなって精神的に追い詰められていく。

仕事は滞りがちになり、失敗が増える。
そしてそのクレーム対応に追われて更に仕事が溜まっていく。

残業は増え、身体的・精神的疲労は蓄積し、またミスを連発してしまう。

そんな悪循環にはまっていたのです。

残業続きで終電にも乗れず、自腹でタクシーで帰宅することもしばしば。

「俺はいったい何をやってるんだろう…」

首都高速を走るタクシーの中から、
疲れきった体、絶望的な気持ちで外をぼんやり眺めていることもしばしばありました。

でも同じ職場にいても、その上司のパワハラにやられやすい人とそうでない人がいました。

私はやられやすい人だったのです。

振り返ってみると…
「上司という立場に対して、自分は抵抗できない無力な存在だと、どこかで思っている。」
「自責の傾向が強く、何か問題が起こった時、自分のせいだと考えてしまいやすい。」

そんなことが心理的な要因、思い込みや考え方のクセだったと思います。

そしてこういったことは、
私だけではなくACであれば誰にも起こりやすいのではないかと思います。

2.ACがパワハラ「被害者」になるリスクが高い理由

アダルトチルドレン(AC)はパワハラの「被害者」になるリスクが高い。

その理由としては下記のようなことがあるでしょう。

(1)「上司–部下の関係」が苦手

人が生まれて初めて上下関係を学ぶ。
その最初の体験は親子関係になります。

小さな子供にとって親は絶対的に必要な存在。
衣食住の全てを親に依存しなければなりません。

健全な親子関係であればあるほど、子どもは親に安心して依存できます。
しかし不健全な親子関係の中で育ったACは「上役」の親に対して安心できず、いつも不安でいます。

そして親子という上下関係に不安を抱えて大人になったACは「上司−部下の関係」に対しても不安を抱きやすく、苦手になりやすいのです。

(2)自己主張が下手

周りの人とどう接すると良いのか。

小さな子どもにとってそのモデルになるのが親です。
親の振舞いから自然と立ち振る舞いを学んでいくのです。

しかし機能不全家族の家庭、両親は良きモデルになることが少ない。

そのため
「自分の言いたいことを健全に相手に伝える」
このことを自然に身に着けることが難しい。

そのため自己主張が苦手になりがち。

言いたいことが上手く言えず、抑え込むかため込んだ想いを爆発させてしまうかのどちらかに振れやすい。

そして自己主張が下手な人はパワハラ上司の餌食になりやすいのです。

(3)柔軟性が少なく自分の考えややり方に固執しがち

親からの圧迫、無関心を受けていたACは「心の安心感」が育ってない。
そのため、つい「守り」に入ってしまい、自分の考えややり方に固執しがちで柔軟性に乏しくなりがち。

上司からのパワハラに合うという場面で上手く立ち回れなくなってしまいやすいのです。

(4)潜在的に持っている罪悪感が強い

機能不全家族では子どもをコントロールするためによく「罪悪感」を利用します。

何か物事が上手くいかなかったのは
「あなた(子ども)のせい」だとして、必要以上に子どもを刺激するのです。

たとえ親に原因があったとしてもです。

そうして子どもを親の想いのままに動かそうとするのです。

そしてこのように動かされ体験が積み重なると、それは心理的なクセになります。

大人になって上司から同じような対応「これはお前が悪い!」といった言動をされると、必要以上に「自分のせいだ。」と考えしまい、都合の良いようにコントロールされやすくなってしまうのです。

(5)感情、精神的に不安定で揺さぶりに弱い

小さな子どもの頃、両親、家が安心できる場でなかったアダルトチルドレン。
「自己信頼」「自分が自分でいることの安心感」といったものが育っていません。

大人になっても感情、精神的に不安定になりやすくなります。
そのため、圧迫的な言動にすぐ動じて自分を見失ってしまい、暴力的な相手の言動に振り回されやすくなってしまうのです。

3.ACがパワハラ「加害者」になる潜在的なリスク

一般的にはアダルトチルドレンは「弱者」のイメージが強いかもしれません。
SNSなどでAC当事者が語る言葉も「被害者」の視点が多いと思います。

しかし実際はACはパワハラの「加害者」になる潜在的なリスクも高い。
その理由としては下記のようなことがあるでしょう。

(1)「良好な人間関係の原型」を子どもの頃に体験していない

(2)親に大事にされなかった「悲しみ」「怒り」の想いを潜在的に強く持っている

(3)感情のコントロールが苦手

(4)自分に対する信頼、安心感が低い

(5)自分の安全を脅かすものに対する警戒心が強い

4.ACがパワハラの「被害者」にも「加害者」にもならないために

パワハラの「被害者」になるのはつらいこと、大きく損をすることになります。
誰でも嫌だと思います。

そしてパワハラの「加害者」になってしまうことも、現在であれば本人に大きな不利益になる可能性が高い。

会社で「パワハラ加害者」として認定されると、人事評価は大きなマイナスになり、昇進が難しくなるばかりでなく、退職を余儀なくされることも出てくるでしょう。

ではどうすれば、ACがパワハラの「被害者」にも「加害者」にも、どちらにもならないようすることができるでしょうか。

その方が生まれ育った環境、心の傷の程度にもよりますが、ほぼ共通して下記のようなSTEPを踏むことが「ACがパワハラの被害者にも加害者にもならない」歩みになるでしょう。

【STEP1】子ども頃の親子関係での体験が原型となって、現在の人間関係を形作っていることに気付く

【STEP2】子どもの頃に身についた人間関係に関する思い込み、パターンを知る

【STEP3】思い込み、パターンの背景にある抑圧された想い、感情を解放する

【STEP4】思い込み、パターンを望むものに変化させる

【STEP5】新しい思い込み、パターンで日常を生きる

まとめ

ACが過去の心の痛みに向き合い、その傷を癒していくことはパワハラの被害者になるリスクを減らすことにつながります。

そしてこれは被害者になりにくくなることのみならず、自分自身が加害者になるリスクを減らすことにもつながるのです。

アダルトチルドレンからの回復の道のりは、自分が潜在的に持っている怒りや暴力、攻撃性を認め、緩めていく道のりでもあるのです。

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この記事を書いた人

アダルトチルドレン回復研究所 代表

高校1年の時、親子関係に悩みすぎて病気になり、胃の3分の2を摘出。その後小さな胃で生きる。
会社勤め(通信会社の営業、CSRコンサル)、病院勤務(心療内科の心理カウンセラー)を経て研究所を設立。
アダルトチルドレンからの回復に関する研究・啓発。カウンセリング、トラウマ解消ヒーリングの提供などを行なう。


HP:https://ac-recovery-lab.com

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