【漢方養生】漢方とマクロビオティックは似ているようで別物です。

日本にはマクロビオティックという食に関する思想があります。
健康に関心のある方なら耳にしたことがあるでしょうし、街ではマクロビオティックをうたった料理教室、ショップやカフェを目にしませんか。
食べ物を陰陽で説明しているので東洋医学だと思われている方もいらっしゃるのでは。
でも、違うのです。
基礎となる陰陽の考え方が漢方(東洋医学)とマクロビオティックとでは意味が逆になっています。
今日はそのあたりを分かりやすく説明できたらと思います。

この記事の目次

漢方とは

漢方とは、中国医学を基に日本で発達した伝承医学のことです。
江戸時代に西洋医学が入ってきて蘭方、洋方といわれたのに対し、それまでの医学を漢方というようになりました。
これに対し、中国で発達した伝承医学は中医学といわれています。

漢方(東洋医学)の陰陽

漢方(東洋医学)の陰陽

陰陽の組み合わせで占う易(えき)占い「八卦(はっけ)」をご存知でしょうか。
八卦で使われる易は、古代中国の伏羲(ふつぎ)によって、この世界を理解するために始まったものです。
易経といいます。
そして、伏羲の後、周の時代に文王やその子の周公によって改良された易経を「周易」といい、東洋医学(漢方や中医学)は、周易の陰陽で運用されています。

易では陰陽を図のように表します。

この図は陰陽の性質を表しています。
陽:これから周囲に離れていくエネルギー
(図は、一つにくっついているがこれから離れていくイメージを示す)
陰:これから固まって凝縮するエネルギー
(図は、二つに離れたものが一つにくっつこうとするイメージを示す)

これが漢方(東洋医学)における陰陽の捉え方です。

漢方は生薬を五味五性で考える

ところで、漢方では原料となる生薬を陰性陽性で論じるのではなく、陰陽五行の五行でその性質をとらえます。
代表的なのは五味、五性です。

五味とは、甘(かん)・辛(しん)・酸(さん)・苦(く)・鹹(かん)の五種の味。
甘い、辛(から)い、酸っぱい、苦い、塩辛いをいいます。

五性とは、寒(かん)・涼(りょう)・平(へい)・温(うん)・熱(ねつ)、あるいは温・微温・平・微寒・寒の五種の性質。
体を温めるのか冷やすのかを五段階でとらえます。

例えば、有名な生薬「甘草(かんぞう)」は薬性能毒(やくしょうのうどく)という書物には「甘平 無毒 一云生則微涼 炙則温」と書かれていて、陰陽の記載はありません。
これは「味は甘く、体を温めも冷やしもせず、毒はない。生(なま)で用いれば体を少し涼しくし、炙って用いれば体を温める」を意味しています。
このようにして、それぞれの生薬の性質をとらえるのです。

マクロビオティックとは

マクロビオティックとは

ウィキペディアのマクロビオティックの項目から引用します。

マクロビオティック (Macrobiotic) は、従来の食養に、桜沢如一による陰陽の理論を交えた食事法ないし思想である。
長寿法を意味する。
玄米、全粒粉を主食とし、主に豆類、野菜、海草類から組み立てられた食事である。
身土不二、陰陽調和、一物全体といった独自の哲学を持つ。
運動創始者の桜沢如一は、石塚左玄の玄米を主食とした食事法のための食養会に所属し会長も務めた後、思想を発展させ、また民間運動として世界に普及させた。
他の呼称に玄米菜食、穀物菜食、自然食、食養、正食、マクロビ、マクロ、マクロバイオティックがある。

マクロビオティックの陰陽

マクロビオティックの陰陽を語るのに重要な人物は二人います。
石原左玄と桜沢如一です。

石原左玄

マクロビオティックの前身ともいえる石塚左玄(1851-1909年)の食養は基礎理論として漢方の陰陽を用いていました。
石塚左玄は幕末の福井の漢方医の家に生まれ、明治時代には医師、薬剤師として活躍しました。
そもそもは漢方医だったので漢方の陰陽が身についていたのは自然なことでした。

また、明治維新後、西洋医学を修めた者でなければ医師になれないことになり、西洋医学の考えを身につけたのもうなずけます。

石塚左玄は、東洋医学、西洋医学の両方に精通したので、東洋医学の陰陽をナトリウム化合物・カリウム化合物というミネラル成分に着目して説明しようとしました。

ちなみに、食育という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、これは石原左玄が最初に使った言葉です。
平成17年に食育基本法が施行され、国民の健康と豊かな人間形成を目指して食育が推進されています。
石原左玄の考えは現在も身近に生きています。

石原左玄の夫婦アルカリ理論

石原左玄の夫婦アルカリ理論

ナトリウム化合物とカリウム化合物は、どちらもその水溶液はアルカリ性を示しますが、そのはたらきは異なります。
石塚左玄は、はたらきは逆だけど、互いを補完し合い、食べ物の中で重要な役割があると考えました。
そして、周易の陰陽に対応させて、ナトリウム化合物を陰性、カリウム化合物を陽性としました。
夫婦アルカリ理論は、男(夫)をカリウム化合物の陽性、女(妻)をナトリウム化合物の陰性と捉え、男女のはたらきは異なるが、夫婦としてひとつという意味だと思います。

桜沢如一

一方、石塚左玄の食養により健康を得た桜沢如一(1893-1966年)は、易経は長い年月を経る間に改良されてきており、初期(伏羲)のものとは陰陽が逆ではないのかと疑問を持ち、石原左玄の周易の陰陽と意見を異にすることになりました。

マクロビオティックは桜沢如一が提唱した思想です。

マクロビオティックの陰陽が漢方の陰陽と逆になったのはこのような訳です。

マクロビオティックは食べ物を陰性、陽性で考える

マクロビオティックは食べ物を陰性、陽性で考える

マクロビオティックは石塚左玄の陰陽とは逆になりましたが、食養の考えは受け継いでおり、ナトリウム・カリウムの含有をもとに食べ物を陰性・陽性に分けています。
食品を分析して陰陽を判断する基準にナトリウム、カリウムを当てているということです。

陰性は、カリウムが多い、遠心力(広がる)、静かなもの、冷たい、柔らかい、暑い土地で取れるもの

陽性は、ナトリウムが多い、求心力(縮まる)、動きがあるもの、熱い、硬い、寒い土地で取れるもの

ここで思い出してください。
漢方の陰陽では、陽は、これから周囲に離れていくエネルギーでしたね。
つまり、陽は遠心力に相当します。
また、陰は、これから固まって凝縮するエネルギー。
つまり、陰は求心力ですね。

逆になっているでしょう?

おまけ:西洋医学の陰陽

本題とは外れますが、おまけの話で西洋医学の場で陰陽はどう使われているかをあげておきましょう。

西洋医学での陰陽を簡単にいうと、「ある」か「ない」かです。
検査での陰性陽性は、物質や反応としてあるかないかを表しています。

尿検査で尿に糖が下りていたら(糖尿なら)陽性で+が書かれています。
たくさんあったら++とか。
糖が下りていなかったら陰性で-。
単純に「ある」か「ない」かです。

参考文献

粟島行春2006年『「陰」「陽」あれこれ』未病医学シリーズ第四十四輯 未病医学シリーズ刊行会

まとめ

このコラムでは、漢方とマクロビオティックでは基本となる陰陽の考え方が逆になっていることをお話してきました。
一言でいうと、石原左玄の弟子の桜沢如一が陰陽を逆転させた結果です。

考えが逆とはいえ、漢方もマクロビオティックもそれぞれの理論体系を通じて健康を追求しています。
健康を求める気持ちに違いはありません。

私は、漢方の方を先に学んだのでマクロビオティックの陰陽の逆転をなかなか理解できませんでした。
マクロビオティックは東洋医学の考えを含んではいますが、陰陽が逆転している点で東洋医学と言い難く、日本古来の食養に基づく独自の思想であるという立ち位置を取っています。
でも、マクロビオティックの良さは子どもを育てる中で取り入れましたし、今もお店でメニューにあれば食べようと思います。
実際、美味しくいただきます。

どちらの考えが正しくて、どちらが優れているかではなく、それぞれの持つ良さを生活に活かし、健康につながりたいものですね。

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この記事を書いた人

心の傷専門家
感情カウンセリング
薬剤師

大学卒業後、製薬会社の学術部で社員教育と医療関係者への情報提供に携わり、その後、整形外科病院で薬剤師として勤務、退職。
現在は心の傷専門家として、ヒーリングやカウンセリングを提供しています。

昭和39年生まれ、一男二女の母。
第一子のアトピーをきっかけに桶谷式母乳育児、栄養学、食育を学ぶ。
第三子の妊娠・出産・育児期は夫婦関係や健康にトラブルが続き心身共につらい日々が続いたので、心と体の回復を目指して漢方と心理学を学んだ。

その学びを深めていく中で、バーストラウマやインナーチャイルド、過去生など心の傷に向き合うことで状況を克服。
今では笑顔を取り戻し、日々軽やかに過ごしている。

セッションでは、生きづらさを感じている方の心が軽くなり、日常の幸せに気づき、自分らしさを取り戻していただけるように心掛けている。

アラフィフ女子が幸せに生きる方法 https://amenosoyokaze.com/

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