現代社会がもたらした弊害―現代人は免疫力が低下しているー

新型コロナウイルス(COVID-19)が私たちの生活を脅かすようになってから

自身の健康への意識が高まり、「免疫力」にも注目が集まるようになってきました。

 

というのも、このウイルスに対抗する確実な治療法はなく、

接種が始まったワクチンも2回の接種で95%の発症予防効果があると言われているものの変異株の出現など以前のような生活に戻るにはもうしばらく時間がかかりそうです。

 

実際、2019年12月COVID-19の人への感染が最初に報告されましたが、

1年半たった今も未だこの騒動は終息していません。

緊急事態宣言が発動され、私たちの生活は大幅に制限されるようになり、

経済活動にも大きな影響を与えています。

 

とはいうものの、COVID-19に感染しても多くの人が無症状で経過するということが分かってきています。

免疫力とは、自分を健康に保つ力のことです。

感染しても特に体の不調なく過ごす方法して、自身の「免疫力」を上げることの重要性が叫ばれています。

 

しかし、残念なことにこのコロナ騒動以前から現代人は免疫力が低下しているということが指摘されていました。

本当に現代人は免疫力が低下しているのか、その要因は何なのかを見ていきましょう。

 

この記事の目次

増えている「眠っても疲れがとれない」人たち

 

免疫力低下のサインの一つとして、朝になっても疲れがとれないというのがあります。

 

1979年に総理府が行った「体力・スポーツに関する世論調査」によると、

その時点ですでに「よく疲れる」と回答した人が61.9%と

多くの人が日常的に疲れを感じていました。

 

とは言っても、そのうちの58.9%の人が「一晩眠れば、翌日に疲れはとれる」と回答しており、当時の疲れは休めば回復するくらいのもので、ほとんどの人は心身の健康に異常をきたすには至っていませんでした。

 

実際の調査でも「あなたは、このところ健康だと思いますか?」という問いに

「あまり健康ではない」と答えた人は14.4%にとどまっていました。

ほとんどの人は疲れを感じるものの日常生活に支障をきたすことはなかったのです。

ところが、1999年に厚生労働省が4000人の15~65歳の人を対象に行った調査になると当時とはその様相は違ったものになってしまいました。

日常生活の中で疲れを感じている人の割合は6割と変わらなかったものの、その疲労の質は大きく変わってしまったのです。休んでも疲れがとれず、学校や仕事を休んだり、退職したりする人の割合が増えていました。

 

「疲れがとれない」は免疫力低下のサイン

「疲れ」は、「休めという身体のサイン」です。

とは言っても、一晩眠って回復していないからといって、疲れがとれるまでしっかり休むことは難しいのが現実です。

つまり、現代は、疲れがとれないまま仕事に行き、更に疲れを溜め込んでしまうという人が増えているのでしょう。

特にまじめな人は無理をしがちです。

そして無理をした結果として、自律神経のバランスが崩れ、免疫力が低下して、身体を壊すということが起こってきているのではないでしょうか。

 

増えているアレルギーを持つ人たち

今、子どもたちを悩ませている病気の中で一番多いのがアレルギー疾患だそうです。

2015年に厚生労働省が行った調査によると

小学生・中学生ともに3人に1人が喘息・アレルギー性鼻結膜炎・アトピー性皮膚炎のいずれかの疾患をもち、

5~10%の子どもが複数のアレルギー疾患をもっていることが分かりました。

アレルギーは子どもだけの問題ではありません。

成人喘息も1985年以降、ほぼ10年ごとに1.5倍程度の増加傾向にあります。

 

あなたは大丈夫? 現代型免疫力低下チェック

2012年11月に10~70代の700人を対象に
感染免疫学者の藤田紘一郎氏監修のもと味の素が行ったインターネット調査によると4現代型免疫力低下に当てはまる人は69.7%にものぼりました。

ちなみに、以下の項目が一つでも当てはまると現代型免疫力低下の可能性があるそうです。

 

□しっかり寝てもなかなか疲れがとれない。

□すぐに口内炎やヘルペスができる。

□風邪を引くとなかなか治らない。

□花粉症やアトピーの症状がひどくなった。

□重要な会議や試験当日など、いざ!という時に体調を崩した。

□季節の変わり目など、寒暖の差が激しい時に調子を崩した。

□久しぶりに激しい運動をした後に風邪を引いた。

 

免疫力低下を起こす5つの要因

1,免疫力の大敵ストレス

現代はストレス社会と言われています。

新型コロナ感染症が問題となる以前の状況でさえ、7割近くの人がストレスを感じているというアンケート調査もあります。

そして、ストレス社会に追い打ちをかけたのが今回の新型コロナウイルス感染症です。

実際にコロナ離婚、児童虐待やDVなど家庭内の問題が増えているようです。

参考)「免疫力アップ」のカギは「ストレス解消」にありーストレスと免疫力の関係

 

2,睡眠不足からくる「睡眠負債」

睡眠負債とは、睡眠不足が借金のように積み重なってあらゆる不調を引き起こす状態のことです。

睡眠は、単に時間だけでなく、睡眠の質も重要になってきます。

2018年の(経済協力開発機構)のレポートによると,

残念なことに日本人の平均睡眠時間はOECD加盟国中で最低でした。

実際に、日本人の4人に1人は睡眠の問題を抱えているとまで言われています。

睡眠負債を溜め込まないためにー睡眠の質を上げる11の方法―

 

3,運動不足からくる運動機能低下

最近、子どもの運動機能が低下していると言われています。

朝礼で立っていられない、和式トイレが使えない、雑巾がけができない、組体操で下になって支えられない、自身の倒立はおろか倒立する子を支えられない、物を投げる動作ができないという子どもが増えてきているそうです。

運動機能低下は高齢者にとっては、より深刻で、
骨折率も年々増えてきていることが指摘されています。

 

4,パソコンやスマートフォンの普及による姿勢の崩れと呼吸の問題

パソコンやタブレット、スマートフォンなどの普及に伴い、

姿勢の崩れが問題になってきています。

スマホを使っている時に首や肩に凝りを感じる、目が疲れやすい、1日5時間以上スマホを使っている、体が疲れやすい、やる気が起きないといった症状がある人は要注意です。

このような姿勢の問題によって、呼吸が浅くなり、低酸素を引き起こしやすくなったり、自律神経が乱れることが指摘されています。

 

5.食生活の欧米化

最近になって、食生活の欧米化による腸管免疫の低下が指摘されています。

腸管免疫の低下の原因として考えられているのが小麦に含まれるタンパクの一種であるグルテンです。

グルテンによってリーキーガット症候群が生じてくると推測されています。

「リーキー」は「漏れている」、「ガット」は「消化器官、腸」という意味で、日本名だと腸管漏洩症候群とも言われています。

実は、腸は食事中の毒素や微生物が体内へ侵入するのを防ぐために、バリア機能を持っています。

リーキーガット症候群は、その名が示すように腸管のバリア機能が弱くなった状態のことです。

そのため、細菌や食物などが体内に漏れ出し、食物アレルギーや慢性炎症を引き起こしてしまいます。

驚くことに現代の日本人は、程度の差こそあれ約70%の人がこの状態になっているという報告があります。

 

まとめ

現代が抱える問題の一つとして免疫力低下についてみてきました。

免疫力低下の要因を知ることは、

自身の免疫力を上げるヒントになります。

免疫力を上げ、この時代を乗り切っていきましょう。

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この記事を書いた人

研修医期間終了後、神経内科医として主に急性期病院にて13年間勤務。
3年間の回復期病棟での勤務を経て、平成24年より在宅医療に従事。2018年5月ヘテロクリニック開設。

多くの患者さんにかかわる中で、より健康であるためには、病気にだけフォーカスをあてるのでは不十分なのではないかと実感し、医療の分野以外にも学んでいる。

高齢になっても若々しく元気な方たちの特徴から、自分らしく生きることが重要性を感じ、そのためのツールとして脳と心についての情報をフェイスブックページやホームページを通じて発信している。

日本内科学会 内科認定医、日本神経学会 神経内科専門医、医学博士、認定産業医、日本臨床栄養協会 サプリメントアドバイザー、感情カウンセラー協会認定 感情カウンセラー、リズ・ブルボーのからだの声を聞きなさいスクール カウンセラーコース終了、NLPプラクティショナー、著書に『クスリに頼らない免疫力向上計画』(みらいパブリッシング)、『脳の取扱説明書』(みらいパブリッシング)

HP:https://hetero-clinic.com/
HP:https://www.harmonista.org/
HP:https://harmonista.jp/

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