宇宙はどのように生まれたのでしょうか。
宇宙の誕生は未だ謎に包まれています。
太陽系が生まれたのは、約46億年前だと言われています。
参考)宇宙の神秘―太陽系ー
宇宙誕生の謎ー太陽系誕生ー
そして、私たちの星、地球は、その6000万年ほど後になる約45億4000万年前に生まれたのです。
参考)宇宙の神秘ー地球誕生ー
地球が生まれた時からさかのぼること約90億年前、
今から約138億年前に宇宙誕生のきっかけとなるビックバンがおこりました。
ビックバン以降、宇宙は拡大を続け、約46億年前の太陽系の形成へとつながるのです。
宇宙誕生のきっかけビックバンについてまとめてみました。
1.そもそもビックバンって何?
ビックバンとは、宇宙がある時期に爆発的な自然現象によって誕生したとする説、又はその現象を指す言葉です。
このモデルを最初に提唱したのが、ベルギー出身のジョルジュ=アンリ・ルメートル(Georges-Henri Lemaître)です。彼は1927年に「宇宙は原始的原子 (primeval atom) の“爆発”から始まった」と述べています。
とはいっても、最初からこのモデルが受け入れられていたわけではありません。
驚くことに、この「ビックバン理論」という呼び名自体も、この説に批判的だったフレッド・ホイルが「this `big bang’ idea (この大ぼら)」と呼んだのが始まりだとか。
そのせいかルメートルは、このモデルを「『宇宙卵(うちゅうらん)』(Cosmic Egg) が創生の瞬間に爆発した」と好んで呼んでいたそうです。
実は、ルメートルは天文学者、宇宙物理学者であるだけでなく、カトリック司祭でもありました。
それもあって、ルメートルの理論はキリスト教の天地創造の教義を強く連想させることとなり、当時の科学界に激しい反応を引き起こしたのです。
2.ビックバン理論が受け入れられる前はどう考えられていたの?
20世紀に入るまで宇宙に始まりがあったとは考えられていませんでした。
宇宙には始まりなどなく、永遠に変化しないまま存在し続けるものと思われていました。。
あのアインシュタインでさえ、最初はビックバン理論には否定的だったそうです。
実は一般相対性理論における重力場の方程式の解がビックバンの存在を示していました。
ところが、アインシュタインはビッグバン理論が受け入れがたかったがために、
定数項を付け加えて、方程式の修正をしてしまったのです。
後に彼は、「これは失敗だった」と言っていたそうですが。
それくらいこの理論は、当時の社会では受け入れがたかったようです。
3.どのようにしてビックバン理論が受け入れられるようになったの?-ハッブルの観測―
最初は否定されていたビックバン理論が受け入れられるきっかけになったのが、
1929年のエドウィン・ハッブルの観測です。
彼は銀河が地球に対してあらゆる方向に遠ざかっており、
その速度は地球から各銀河までの距離に比例していることを発見しました。
これがハッブルの観測です。
距離に比例して遠ざかっていくということは、宇宙が膨張しているということを示しています。
つまり、ビックバン理論を観測結果から裏付けたわけです。
ハッブルの観測を導き出したドップラー効果とは
どうして観測で銀河が遠ざかっているのがわかったかというと、ドップラー効果からだそうです。
ドップラー効果とは観測者と音源が互いに近づいたり遠ざかったりするときに音の高さが変わることをいいます。
サイレンを鳴らしている救急車が通り過ぎるときを思い出してみてください。
救急車がサイレンを鳴らして近づいてくるときには、音がだんだん大きくなるとともに音が高い音に聞こえます。
ところが、救急車が通りすぎたとたんに音が低く聞こえるでしょう。
これは、観測者と音源の距離が変わることで振動数が変化するために起こってきます。
これと同じような現象が光の波長にもあります。
近づいてくるものから発せられる光の波長は圧縮され青く、
遠ざかるものは引き伸ばされ赤くなるのだそうです。
ハッブルは、長い年月をかけて、いろいろな銀河からくる光のスペクトルを調べました。
すると、そのほとんどが赤いほうに向かってずれていた、つまり地球から遠ざかっていたのです。
このように観測からビックバン理論を支持する結果が発見されたわけですが、それでこの理論が簡単に受け入れられたかというと決してそうではありませんでした。
4.どのようにしてビックバン理論が受け入れられるようになったの?-α―β―γ理論―
当初否定的だったビッグバン理論ですが、そこに一石を投じたのがロシア出身の理論物理学者であるジョージ・ガモフです。
彼は、自然界に存在する水素とヘリウムの割合が高すぎることに注目しました。
そして、1948年にアルファ、ベーテ、ガモフの共著論文で、α―β―γ理論を元にした「火の玉宇宙」というアイデアを発表して、ルメートルのモデルを支持します。
初期の宇宙はすべてが圧縮され高密度だったうえに、超高温(火の玉)であり、膨張につれてしだいに冷えていったということを提唱し、そのモデルの理論的裏付けを行ったわけです。
彼は、先のフレッド・ホイルの発言をおもしろがって、この理論について「ビックバン」という言葉を使っていたことから「ビックバン」という言葉が広く使われるようになりました。
実は、先の論文もベーテはほとんどかかわっていないのですが、ジョークのセンスに溢れたガモフがα-β-γ理論という名前に合わせて、原子核研究ですでに名声を博していたベーテの名前だけを借りたそうです。
とはいっても、彼の提唱した理論自体が受け入れられるようになったのは、1965年の宇宙マイクロ波背景放射の発見以降とずいぶん先のことになります。
5.ビックバン理論が受け入れられるまで、ハッブルの観測はどうとらえられていたの?
ホイルが1948年に提唱した「宇宙には始まりなどなく、定常である」とする「定常モデル」が科学者の間では好まれていたようです。
ちなみにこの定常モデルでは、先の観測結果については「銀河が遠ざかるに従って、後に残った空間に新しい物質が出現して、それが固まることで新たな銀河を形成してゆくことで、宇宙の物質の密度が一定に保たれる」と解釈されていました。
つまり、宇宙は膨張はしているが時間とともに変化などしないという主張です。
これは「宇宙は永遠で無限だから偉大なのだ」と考える当時の科学者の心をつかんでいたのです。
6.ビックバンの証拠―宇宙マイクロ波背景放射とは―
宇宙マイクロ波背景放射とは、天球上の全ての方向からほぼ等方的に観測されるマイクロ波のことです。
宇宙の温度が下がって、電子と陽子が結合して水素原子を作り、宇宙が放射に対して透明になった時代のスナップショットと考えられています。
1964年にベル研究所のアルノ・アラン・ペンジアス(Arno Allan Penzias)とロバート・ウッドロウ・ウィルソン(Robert Woodrow Wilson)が、電波天文学の観測に使う新しい高感度のホーンアンテナが使うたびに、かすかではあるけれど途切れることのないノイズを記録していることに気づきました。
そのノイズを調べた結果、この信号が自然界から発生していて、全天のあらゆる方向から届いているという結論に達したのです。
ただ、この2人が知らないことがありました。
ちょうど同じような時期にこのような信号を宇宙論学者たちがビックバンの証拠として探し求めていたのです。
というのも、100億年前にビックバンがあったのであれば、今もこの高温状態の名残は星や銀河を超えて観測可能であり、最も遠い宇宙の果てからあまねく届いているはずだと考えられていたからです。
そして、この信号の発見がプリンストン大学の物理学者ロバート・ディッケに伝わったところから、一気にビックバン理論が支持されることになったのです。
7.ビックバン以前の宇宙―インフレーション現象―
ビックバン理論が広く受け入れられるようになったとはいえ、宇宙誕生の謎がすべて解明されたわけではありません。
そもそも宇宙はなぜ急激な膨張を始めたのでしょうか。
その最も有力な説が極小だった宇宙全体が一瞬で急膨張するインフレーション現象が起きていたとするものです。
宇宙は最初、膨張も収縮もしないふわふわとした状態で生まれ、それがこの加速膨張によって膨張速度が増した状態になったとするものです。
2014年3月にアメリカのハーバード・スミソニアン天文物理学センターなどの研究グループがインフレーションが起きていたことを示す証拠を発見したと発表し、話題になっています。
とはいえ、これからも全天で観測し確認が必要な状況です。
しかも、これまでの天文観測や理論研究から予想されていたよりも、原始重力波を示す偏光パターンの信号が桁違いに強いことが判明するなど、まだまだ謎が多いのも事実。
これからさらに新しいことがわかってくるのかもしれません。