「あいさつ」の効果とは?

この記事の目次

はじめに

 

日常的に交わされる「あいさつ」には、とても重要な意味があることにお気づきでしょうか。「親しき仲にも礼儀あり」という言葉があるように、「本当に親しい間柄であっても、最低限の礼儀は守るべきである」という考え方が古くからあります。

「親しき仲」とは、夫婦、家族、親友(友人知人)、仲間(先輩後輩)等におきかえて考えてみるといいでしょう。友達だから、親子だからといって、「あいさつ」を軽視していいというものではありません。

また、いくら親しい間柄としても、ベタベタと距離が近すぎる人間関係を作ってしまうと、歪みが生じてしまいます。一定の距離感を保ちつつ、節度を持った関係を構築していく為にも「あいさつ」の重要性を再確認してみてはいかがでしょうか。

 

1、親しき仲にも礼儀あり

 

 

「親しき仲にも礼儀あり」という諺には、「どんなに親密な間柄であっても、守るべき礼儀がある」という意味があります。また、仲が良くても、度が過ぎて礼儀を失うようなことがあってはいけないという戒めでもあり、親しいことにより遠慮がなくなり、それが不和(仲が悪い状態)の元にもなるということです。

一説によると、この諺の由来は中国の朱子学にあるといわれ、『論語』に近しい一節があります。

 

有子曰わく、礼はこれ和を用うるを貴しと為す。先王の道も斯を美しと為すも、小大これに由れば行なわれざる所あり。和を知りて和せんとするも、礼を以てこれを節せざれば亦おこなわれざればなり。

(『論語』貝塚茂樹訳注 中公文庫)

 

貝塚茂樹氏の訳注によると「礼を実現するには調和がたいせつである。(中略)礼の本質にかえって、身分的な秩序にしたがって節制を加えないと、悪平等となって、またうまくゆかなくなるものだ」とあります。

“人間関係に調和をもたらすには礼が大切ですが、礼の本質を掴まなくては調和をもたらすことも難しい”と読むことができそうです。そして、その本質とは“相手を敬う心”にあるといえそうです。

この有子の言葉は、全体的にとても難解な言い回しをしているために、直接の語源とするかどうかは学術者でも難しいところだといわれています。

しかし、日本では、安土桃山時代の1599年(慶長4年)頃に成立した『北条氏直代諺留』という文献に登場することから、少なくとも江戸時代ころには一般に定着した諺なのかもしれません。

 

2、けじめをつける

 

 

礼儀には、他者との良好な関係性を保つための敬意表現としての意味合いがあります。私たちの周囲を見回すと、良好な関係を保ちたい相手は多くいるといえます。なかでも夫婦、家族、親友(友人知人)、仲間(先輩後輩)等の関係は一番に浮かんでくる関係性の深い人たちでしょう。

こうした人たちとの関係を良好に保つためには、礼を尽くすことが大切になることは誰でも知っていることなのかもしれません。

「朝起きて何もいわない」、「食事の時も黙って食べる」、「出かける時に何も告げない」、「眠る時に黙って布団に潜り込む」等々の行動をしていては、良好な関係を作れないどころか、自分自身の“ケジメ”もつけることもできなくなります。

このようなダラダラと緩みきった生活では、自分自身が望む良好な人間関係を作ることもできず、家庭、職場、社会に馴染み、調和を作ることさえ難しくなることでしょう。

礼を尽くす基本的な「あいさつ」という動作は、朝起きた時、食事をする時、会社(外出など)に出ていく時、人に会う時、また別れる時、家に帰った時、夜休む時などのひとつひとつにおいて、しっかりとした“ケジメ”をつけることです。

丁度、竹などにフシがあるように、より良い生活、より良い関係を築いていくためにも「ケジメ」をつけることが大切になります。

 

3、まごころをあらわす

 

 

人間は、心に思ったことを形に表す本能を持っているのか、心の中に思っていることは身体を通し、動作や言葉をもって表し、他人に伝えることで、お互いの心の交流を図っています。

「あいさつ」は、人と人とを結ぶ大切な役割を担っています。互いの尊敬や心(愛情)の交流であり、行動できた時に人間関係のあらゆるシコリは消えてしまいます。

この「あいさつ」の実践が、大切にされているか、おろそかになっているかによって、お互いの関係性だけでなく、周囲の明るさにも影響を及ぼしてしまうことがあります。

現代では、見知らぬ人から親しく声をかけられたりすると、気味が悪くなったり、不信感を感じる傾向も強いかもしれません。しかし、多少の縁から知り合えた者同士が、笑顔で元気よくあいさつされた時の感動は、忘れられないものになるでしょう。

もしかしたら、「あいさつ」ひとつで、相手の記憶に残るだけでなく、今後の運命をも好転させてしまう可能性を秘めている可能性があるかもしれないのです。

 

《事例①》

M君(25歳、家事手伝い)は、生まれつき無口で消極的であったために、明るく元気な「あいさつ」というものが出来ずにいました。

ある時「何気なく交わす一言が、人の心に響き微妙に働きかけることがあります。なかでも“あいさつ”には、人間関係をよりよくする働きがあります。そして、人の心に染み込んで、時には喜びを生み、相手に生きる喜びを与えることができる」ということを教えられて、半信半疑の状態でしたが〈自分にもできるかもしれない…〉と考え、行動に移すことにしました。

「おはようございます」「ありがとうございました」という“あいさつ”は、ぎこちない始まりを見せましたが、続けていくことで“明るく”て“元気”な挨拶へと変化していったのです。

さらに、明るく元気な挨拶を続けることで、他人の良さがわかるようになり、〈嫌だな…〉と感じる人がいなくなっていきました。そして、周囲にいる人は自分を助けてくれる大切な人であることに気がつけるようになったのです。

人前で自分のことを話すことができなかったM君でしたが、堂々と人前で自分自身のことを話せるようになったことで自信が生まれ、事後にも積極的に身を入れて明るく働くようになったのです。

 

4、主役は自分

 

 

人には事の大小を問わず全般的に、自分の置かれた不遇の環境を人のせいにしたり、社会の責任にしたりする傾向があるようです。

自分以外のモノの“せい”にしてしまう理由は、各々色々とあるようです。しかし、自分の身に降りかかるものは、自分に必要があって現れた現象だと受け止めて対処していくことが大切になるでしょう。

他者や環境を変化させることは非常に難しいことですし、不可能に近いことなのかもしれません。しかし、自分自身を変化させることは今すぐにできます。

自分の置かれた環境が“不遇”だと感じたのであれば、その環境を変えるのではなく、自分自身で環境の“捉え方を変化”させることに意識を働かせてみると良いのです。

自分自身の考え(内面的な部分)で、物事の捉え方を変化させるということは、少々時間の要するものもあるでしょう。しかし、自分自身の人生の主役は自分です。主役であることに自覚をもって、行動していくことで、道が切り開かれていくことを忘れてはいけません。

 

《事例②》

4人兄弟の長男に生まれたY君。酒癖の悪い父親を持ち、月日が経つごとに父親を憎み、嫌う気持ちが膨れ上がっていくとともに、自分自身の性格も歪んでいきました。

そして、高校を中退した彼は、色々な職業につきますが、長くは勤めることができずに、結局、父親の仕事を手伝うようになりました。しかし、商売や家庭のことなど、何かにつけて父親と意見が合うことがなく、〈オヤジが死ねば、この店を自由にできるのに!〉と思う毎日を過ごしながら、怒りと憎しみを溜め込んでいきました。

そんな時に、たまたま誘われたセミナーで「あいさつ」をすることを教えられました。嫌々ながらも続けることにしたY君は、明るく元気な声で挨拶をすることを勧められましたが…うまく声が出ません。

そんな日常が続いていたある日のこと、父親からの「あいさつ」が返ってきた時に、父親の気持ちが少し分かったような気がすると言います。

「父親とは喧嘩する日常が続いていたけども、自分の見方や考え方が如何に間違っていて、歪んでいたかを知ったような気がする」

うまく声を出すことができなかったY君でしたが、継続的に“あいさつ”をすることで、明るい“あいさつ”に変化したことで現れた出来事です。

このことをきっかけに、父親との関係も少しずつ良好になり、店舗を任されるようになっただけでなく、売上も倍増していったといいます。

 

最後に

 

 

最近ではどこの家庭でも子供が「勉強をしたかどうか」、「宿題をやったかどうか」といった点に異常なほどの関心があっても、人として生きていく為に必要な“基本的なルール”については漏れていることが多いようです。

もちろん、勉強も大切な要素のひとつです。しかし、人と人とのコミュニケーションを疎かにしてしまっては、どれほど勉強ができたとしても、生きていくことが辛くなるのではないでしょうか。

“基本的なルール”には、“しつけ”とされるものが多く含まれていますが、なかでも、「あいさつ」は基本中の基本といえます。

 

「おはようございます」

「おやすみなさい」

「いただきます」

「ごちそうさま」

「いってきます」

「ただいま」

「こんにちは」

「さようなら」

「ありがとう」

「すみません」

 

一見、当たり前に見えるあいさつの言葉は、人と人の心を明るく楽しく結びつける力となります。まずは、この10個の言葉から大切にすることから始めてみてはいかがでしょうか。

「あいさつ」ひとつできないがために人間関係がうまくいかないケースは、社会にたくさんあります。しかし、ちょっとした心がけひとつで身につくのも“あいさつ”です。

「あいさつ」から、改めて始めてみようではありませんか!

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この記事を書いた人

1980年11月、千葉県生まれ。

1999年4月、建築設備業(空調設備・給排水衛生設備・修理、保守管理)の会社に入社。在籍中は、現場監督・営業職・社内経理等を担当。専門技術者として経験を積む。

2010年4月、民間の社会教育団体に入所。前職の経験を活かしつつ、”心の働かせ方”について学ぶ。さらに、「心の働かせ方・考え方」に関するセミナーを全国約1,200会場、講師として経験する。同時に、企業向け情報誌の執筆や経営者を対象に心の経営指導にも従事した。

2017年6月、これまでの経験を活かしつつ、多くの方々と共に”心”の勉強をしていく為の場所として「NextStage(ネクストステージ)」を立ち上げる。現在の活動拠点は、神奈川県三浦市、千葉県南房総市、熊本県菊池郡に置いている。また拠点に関わらず、連絡を受ければ全国何処にでも行動する瞬発力をもって、活動展開をしている。

HP:https://nextstage-iida.amebaownd.com

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