一悟術

アダルトチルドレンと「依存症」「アディクション」の関係 

アダルトチルドレン(AC)は機能不全家族で育ち成人した人々のことですが、元々はアルコール依存症の親のもとで育ち大人になった人々のことを指していました。

言葉の成り立ちから関連のあるACと依存症。
今回は両者に加え、アディクションの関係についてみていきましょう。

1.「アディクション」「依存症」とは

アディクション・依存症とは何か、人によって若干見方が変わる場合があります。
そこでこの記事の中では下記のように定義しておきたいと思います。

・アディクション(Addiction)
ある特定の物質や行動、人間関係に不健康にのめり込み、やめられない状態

・依存症(dependence)
アディクションのうち、医学的な診断基準を満たしたもの
(依存対象によっては医学的な定義や診断基準がないものもあります。)

*医学的な定義や診断基準
「アメリカ精神医学会の診断基準(DSM-V 2013)」「世界保健機関(WHO)の疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD-11 2018)」が事実上の基準となっています。
依存症については改定の度に用語や分類などが大きく変っており、まだ過渡期にあると言えるでしょう。

この定義に基づきアディクションと依存症の関係について図にすると、下記のようになります。

医学的に依存症と診断されるのは「やめられない度合い」が非常に高いものです。本人の意思や根性ではその行為を止めることのできない病気の状態にあると言えます。

もはや本人が自力で解決できない状況に陥っているため、周りの理解や医療機関などの適切なサポートを得ることが必要となります。

2.アディクション・依存症の種類

アディクション・依存症は何を対象とするのか、大きく三つに分けられます。

物質依存

精神に作用する物質を摂取する

主な物質依存
・アルコール依存
一種の麻酔効果があり、摂取すると大脳皮質の働きが抑えられ、飲み始めは陽気になったり多弁になることがある。
・薬物依存
大麻や麻薬、シンナーなどの中枢神経系を興奮させたり抑制させることで、心身の状態を変える作用を持つ。
・ニコチン依存
摂取することで、脳内に快感を生じさせる物質(ドパミン)が大量に生成され、「ホッとする」「落ち着いた」などの気持ちにさせる。

行為依存

特定の行為にのめりこむ

主な行為依存
・ギャンブル依存
パチンコや競馬・競輪といった公営競技などの賭け事にのめり込む。
・買い物依存
衝動的な買いたい欲求が抑えられなくなり、コントロールができなくなる。
・ゲーム依存
オンラインゲームなどに没頭し、生活や健康に深刻な支障が出てしまう。

人間関係依存

特定の関係にのめりこむ

・恋愛依存
過度の異性に執着し、強い自己破壊的、自己犠牲的な言動をとる。
・DV依存
身近なパートナーへの暴力がやめられなくなる。
・セックス依存
ネガティブな結果になるにもかかわらず、衝動的な回避の道具としてセックスを利用し、やめられなくなる。

*上記の依存のうち、買い物依存、人間関係依存については医学的な定義や診断基準はありません。(2018年9月時点)

3.アディクション・依存症になる原因

依存症になる原因について、以前は本人の性格やモラル・道徳の問題だと考えられていました。

古くから知られていた依存症が薬物やアルコールが対象だったこともあって、「薬物などにすぐ手を出してしまう、衝動的で自己破壊的な性格の持ち主だから」「人としての義務を果たさず、薬物などから得られる快楽を求めてしまう快楽主義の人だから」などと考えられてきたのです。

その後研究が進み、薬物やアルコールなどの摂取が脳に強烈な快感をもたらす依存性の仕組みも分かってきたことから、徐々に「依存症は病気であって、治療の対象である」として認知されるようになってきました。

そして心理面から依存症を捉えた理論として、現在もっとも支持されているのはアメリカのカンツィアン博士らが提唱した「自己治療仮説(Self-medication hypothesis)」です。

自己治療仮説が生まれた背景

ベトナム戦争などをキッカケに米国社会全体が大きく揺り動かされた1960~1970年代にかけて、アメリカでは薬物汚染が急速に広がりました。
多くの薬物依存症患者が出現したことをキッカケに、アメリカでは依存症の原因に関する探求が強く求められるようになったのです。

原因はどこにあるのか?
経済格差や社会的不平等といった「社会的」なものなのか。
脳の中の伝達物質の異常などによる「生物学的」なものなか。
それとも個人が持つ疎外感などによる「心理学的」なものなのか。

それぞれの相互作用も含め、原因と治療法に関する研究が国家レベルで進められるようになりました。

自己治療仮説が生まれるまで

その頃、カンツィアン博士はヘロイン依存症患者の治療・研究にあたっていました。

当時、薬物依存症患者は「社会にとって危険かつ有害な存在である。」と考えられており、「モラルの低い堕落者」「自己破壊的な性格を持った者」といった蔑視もされていたのです。
そして無意識のうちに治療者側も同様の見方・感情を抱きがちであったため、カンツィアン博士は自分自身の内なる偏見を克服する必要がありました。

そこで博士は診察の中で、自己破壊的な行動の裏に何があるのか、家族や生育に関わることなどきわめて広範囲な聞き取りを重ねることにしました。
そうするうちに患者が依存症になる前から、いかに深刻な苦悩を持っていたのか理解するようになったのです。

暴力に満ちた崩壊した家庭で育ったこと、強度の感情的苦痛、そして自分自身の行動を制御する能力の不十分さ。
これらを抱えている多く患者の姿が見えてきたのです。

自己治療仮説による依存症とは

名前を見ると少し難しい感じがしますが、内容はとてもシンプルなものです。
メインとなる内容は三つになります。

■人を依存症に突き動かすのは「心理的な苦痛の緩和」である

依存症の本質は従来言われてきた「性格の問題」「快楽の追求」ではなく、「その人が抱えている心理的な苦痛の減少・緩和」が主である。

成育過程におけるトラウマ体験や過酷な成育環境が原因となり、心理的な苦痛を抱えた人は幾つもの問題を抱えがち。
・感情的な混乱(ネガティブな感情に翻弄される、もしくは漠然とした不快気分を抱えているなど)
・自尊心、自己評価が低い
・人間関係のトラブルが引き起こす苦悩
・自分で自分自身の行動をコントロールすることが困難
など

その人がその物質・行動などがつかのまの安らぎをもたらすことを発見してしまったがために、頼らざるおえなくなってしまい、結果的に依存症になる。

■依存者はそれぞれが抱えている「心理的苦痛」を解消するのに役立つ対象を、無意識の内に選んでいる

人がどのような対象に依存するのかは、各々の精神的苦痛の性質などによって異なる。


・内在する激しい怒り → 気持ちを鎮静化させる薬物など
・気分の落ち込みや意欲の低下 → 気分を高揚させる行動(ギャンブル、買い物など)など

人はあらかじめある対象に対して「依存する」ことを意図しているわけではない。
ストレス(心理的苦痛)解消などで様々なことを試しているうちに、たまたま特定の対象が特別な慰めや苦痛の緩和、あるいは気分の高揚といった効果を持っていることが分かり、のめり込むようになってしまう。

■依存によって新たな苦痛を繰り返すのは「別の苦痛」を用いた「苦痛の緩和」のため

成育過程におけるトラウマ体験や過酷な成育環境で育った人は、自分の感情を上手く感じたり、言語化するのが苦手であったり、逆に自分の爆発的な感情に圧倒されて衝動的な言動を起こしてしまいやすい。

自分では言語化しがたい思考を混乱させるような不快感を、自分がよく理解している薬物の摂取などが引き起こす不快感へと置き換える。
そうすることによって、コントロールできない心理的な苦痛をコントロールできる苦痛へと変えている。

これは言い換えると、「理由不明で怖い苦痛」に圧倒されている人が「理由が明確なだけ楽な苦痛」を得る。
そうすることで、もともと持っていた苦痛から一時的にでも意識をそらすことができる、とも言えます。

4. アダルトチルドレンはアディクション・依存症になりやすい?

アダルトチルドレンはアディクション・依存症になるとは限りませんが、潜在的に持っている心の傷(トラウマ)が大きければ大きいほどリスクは高まるでしょう。
その理由として下記があります。

機能不全家族で育ったことに由来する生きづらをもっている

カンツィアン博士の研究によると、依存症の背景には「成育過程におけるトラウマ体験や過酷な成育環境」がありました。
これはまさに機能不全家族と重なります。

そして機能不全家族で育った影響が大きいほど、潜在的に持っている心の傷(トラウマ)が大きくなるのです。

助けを求めることが苦手

アダルトチルドレンの中には幼少期から慢性的な生きづらさを抱え、みずからの苦しい感情を周囲の誰かに受止めてもらう体験が充分にないまま成長した人もいます。

そうすると心理的に孤立した状態に慣れてしまい、他者に適切な助けを求めることができなくなってしまいます。
トラウマが大きければ大きいほど、他者との人間関係の構築が上手くいかず、この傾向が強くなります。

その結果、心理的苦痛を抱えたまま解消できず、自分で何とかしようと何かの物質やある行動にのめり込んだり、他人に過度に依存しやすくなってしまうのです。

アダルトチルドレンがアディクション、依存症に陥る要因

「潜在的に持っている心の傷(トラウマ)の大きさ」に加え、「受けているストレスの度合い」そして「のめり込むなんらかのキッカケ」が揃った時に、アダルトチルドレンがアディクション、依存症に陥りやすくなると言えるでしょう。

5. アディクション・依存症からの回復

自己治療仮説にもとづいた回復の方針とはどんなものか、カンツィアン博士が提示する代表的な治療方法は下記になります。

セルフヘルプ(自助グループへの参加)

何かの問題や悩みを抱えた人が、同じような問題を抱えている人とつながり、運営している集団「自助グループ(self-help group)」。
自助グループでは同じ悩みを抱える仲間が定期的に集まって、気持ちや経験、情報をわかちあうミーティングが開かれています。
継続的に参加することで依存症の根底にある心理的苦痛、またその背後にある自分自身の生い立ちに向き合いやすくなります。

心理療法

認知行動療法などの各種心理療法の様々な側面を患者に合わせ適宜組み合わせることで、依存症者が依存によって「自己治療」してきた心理的な苦痛の改善をはかることが可能となります。

薬物療法

カンツィアン博士の見解では薬物療法は依存症治療の始まりであるとされています。
依存症治療薬は、依存症を抱える人を依存に走らせる苦痛を和らげることによって、自らが抱える様々な心理的な問題に向き合いやすくなるために使用されます。

援助なしの回復

なんらの治療を受けることもなく、自然に依存症から回復してしまう人もいます。
実はこうした回復は、通常考えられているよりも頻繁に起こっている可能性があります。
援助を受けることなしに回復する人たちはもともと軽症で、回復のプロセスを複雑化させる精神医学的な症状が比較的少ない人達の場合が多いでしょう。

6. まとめ

依存症、アディクションは誰でもなりうるものだと思います。

直面している心の問題や自分には解決不能を思えてしまうような圧倒される現実を目の前にした時、人は何かに依存したくなります。
そして、不健康な影響があったとしても、止められなくなってしまうこともあるでしょう。

大変苦しい時ですが、それは自分自身をしっかり見つめる機会でもあります。
自分が抱えている心理的苦痛の根に光を当てることは、過去に起因する負の影響からの解放につながるのです。

監修:神経内科医 木ノ本景子

*参考文献
DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル 日本精神神経学会 (監修) 医学書院 2014
疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD-11) 世界保健機関(WHO) 2018
エドワード・J・カンツィアン, マーク・J・アルバニーズ『人はなぜ依存症になるのか 33-44頁 ,59-74頁 157-172頁 松本 俊彦 (翻訳) 星和書店 2013
松本俊彦「依存という心理―ひとはなぜ依存症になるのか」『こころの科学』182号 12-16頁 日本評論社 2015

永田雅宏
自然保護分野の新規事業開発、企業コンサル(CSR経営)、病院の心療内科カウンセラーを経てアダルトチルドレン回復研究所を設立。
現在は神奈川県の江ノ島を拠点に、アダルトチルドレンからの解放・回復に関する研究・サービスの提供を行っています。
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