この記事では、銀杏の食べ過ぎには気をつけないといけないことをお伝えしています。
茶碗蒸しや飛竜頭(がんもどき、ひろうす)の中に黄色いひと粒が入っていますね。
炒った銀杏が升に盛られて露店で売られていることもあります。
好きな人なら次から次へと手が伸びることでしょう。
ですが、意外にも知られていないのが、銀杏中毒には死亡例もあるということです。
しかも、どれくらい食べたら中毒になるかも年齢や食べる量に幅があってなかなか厄介という代物です。
今回は、ある映画から銀杏に興味が湧いて調べたことを記事にしてあります。
この記事が銀杏好きな方への注意喚起になればと思います。
中毒死疑惑の映画「家族はつらいよ2」

2017年に映画「家族はつらいよ2」が公開されました。
【監督】山田洋次(「男はつらいよ」「釣りバカ日誌」各シリーズ)
【配給】松竹
【時間】113分
【原作】「家族はつらいよ2」ノベライズ版
この映画のあるシーンが問題の疑惑です。
あらすじ(Wikipediaからの抜粋)
周造はドライブ中に偶然、旧友の丸田と出会う。
かつて呉服屋の息子で女子生徒からもモテていた丸田であったが、70歳を超えた今、彼は工事現場で棒ふりをしながら生活費を稼ぎ、ボロボロのアパートで孤独に暮らしていた。
丸田を哀れに思った周造は旧友を集め、丸田を励ます会を開く。
久しぶりに美味い酒を飲み上機嫌に酔っぱらった丸田は、周造に連れられて平田家に泊まることになったのだが、朝目が覚めると大変な事態になっていた。
居酒屋で「銀杏で飲む酒はうまい!」と上機嫌な丸田さんがお皿に殻が山盛りになるくらいたくさんの銀杏を食べました。
10個20個のレベルじゃなく本当に山盛り。
翌朝、丸田さんは亡くなっていて、警察の検分の後、周造は身寄りのない丸田さんを葬送することになります。
ちなみに、銀杏好きの丸田さんのために棺桶に銀杏をいっぱい入れてあげ、火葬の時に銀杏が爆竹のように爆ぜるのが映画の落ちでした。
あの山盛りを見て、銀杏中毒死を真っ先に疑ったのです。
それでは銀杏について読み解いていきましょう。
読み方ひとつで意味が違う「銀杏」
銀杏の読み方は何を指すかによって違います。
樹木を指す場合はイチョウ、種子としてはギンナン、生薬としてはギンキョウと読みます。
銀杏(イチョウ)は樹木

イチョウは雌雄異株の植物で、その仲間が一億5000万年前にもこの地球に生息しており、今では生きた化石といわれています。
中国原産といわれています。
あのおなじみの葉っぱの形は、私たちがよく見ている木の葉と違い、鴨やアヒルの足に似ているので鴨掌(おうしょう)樹ともいいます。
銀杏(イチョウ)は街路樹でよく目にします。
大阪に住んでいる方ならイチョウと言えば御堂筋の並木が頭に浮かぶのではないでしょうか。
皆さんはいかがですか。
また、古木では、青森県深浦町に樹齢1000年以上といわれる木があります。
化石も見つかっていることから日本には古くからあったようです。
中国の古典には銀杏(イチョウ)は11世紀から登場していて、日本にはそれ以降伝わったという説もあります。
銀杏(ギンナン)は種子
種子は発芽して生長すれば一個の植物となります。
種子は、その小さな一粒で植物一個を作り出す生命力を持っていて、栄養価も高く精が強いものが多いです。
また、毒を持っているものもあります。
種子が毒を持つのは、鳥や動物に食べられず種として生き残り芽吹くための知恵といえます。
例えば、梅干しの種。
種を割って出てくる白い部分、これは仁(じん)といいます。
ここには青酸配糖体アミグダリンという毒が含まれていて、未熟な青梅では濃度が高いため「青梅を生で食べるな」というおばあちゃんの知恵が有名です。
私たちが食べる銀杏もこの仁の部分です。
銀杏(ギンキョウ)は生薬
毒というのは裏を返せば生理作用が強い成分です。
これをうまく使えば薬となり得ます。
成分のデメリットにフォーカスすると毒、メリットにフォーカスすれば薬という訳なのです。
銀杏(ギンキョウ)も同じで、銀杏(ギンキョウ)には毒もありますが、薬としても使えます。
中医学では銀杏(ギンキョウ)を用いた薬は次の3つがあります。
- 定喘湯(ていぜんとう)
構成生薬は、銀杏、麻黃、蘇子、甘草、款冬花(かんとうか)、杏仁、桑白皮、黃芩、半夏 - 鴨掌散(おうしょうさん)
構成生薬は、銀杏、麻黄、甘草 - 易黄湯(いおうとう)
構成生薬は銀杏、芡実(けんじつ)、山薬、黄柏、車前子(しゃぜんし)
日本最古の医学書といわれる医心方(いしんほう)は平安時代(10世紀)の書物で、その食用篇は食べ物について書かれています。
ここには銀杏(ギンナン)の記載はありません。
また、江戸時代の薬性能毒(やくしょうのうどく)は様々な生薬について書かれていますが、ここにも銀杏(ギンナン)の記載はありません。
以上から、銀杏(ギンキョウ)を使った薬はあるにはあるが、日本での汎用性はなかったと考えられます。
銀杏の毒

日本には銀杏(ギンナン)は年の数より多く食べてはいけないという伝承もあり、昔から食用には注意がされてきました。
経験からくる先人の知恵は科学的根拠はなくとも耳を傾けたいものです。
一方、イチョウ葉のお茶はいつから広まったのでしょうか。
健康食品としてイチョウ葉エキスが出てきましたが、その毒性についてはどうなのでしょうか。
種はダメで葉はセーフなのでしょうか。
銀杏(ギンナン)の毒性
次に、銀杏の毒性について医学的な情報を見てみましょう。
を公益財団法人日本中毒情報センターの情報からの抜粋です。
一度に多く食べると嘔吐、けいれんなどの中毒症状が出現することがあります。
ギンナンに含まれる有毒成分は熱に安定で、加熱調理しても消失しません。子どもが10個足らずを食べて中毒症状を起こした事例もありますので、食べ過ぎないよう十分注意しましょう。
経口中毒量 小児 7~15個
成人 40~300個症状 摂取後1~12時間で発症し、90時間以内(約半数は24時間以内)に回復する。
死亡例も報告されている。
主に嘔吐と痙攣で、痙攣が反復することが多い。
不整脈、顔面蒼白、呼吸困難、呼吸促迫、痙攣、めまい、意識混濁、下肢の麻痺、嘔吐、便秘、発熱
イチョウの実の果肉部分は素手で触るとアレルギー性皮膚炎を起こす成分(ビロボールやギンコール酸など)が含まれています。
種子である銀杏(ギンナン)にはビタミンB6を阻害する4-O-メチルピリドキシン が含まれています。
臭いといい、かぶれるといい、中毒といい、なかなかやっかいなことです。
小児が食べるのは特に注意したほうが良いと思われます。
中毒量の幅が広いのはケースバイケースが考えられるからでしょうが、少量での死亡例もあります。
小児はもちろん、成人も要注意です。
再度、お伝えします。
銀杏を食べるのは注意が必要です。
イチョウ葉エキスは?
最近、ドイツなどでは認知機能等の改善効果を期待した医薬品として利用されていて、日本ではイチョウ葉エキスを含む健康食品が売られています。
個人的には、イチョウの葉にも果肉と同様ギンコール酸が多く含まれているので、医薬品で医療に使うならともかくも、食品としてはそう簡単に摂取して良いのだろうかと疑問を持っています。
毒性成分をどのくらい除去できているかは製品によって様々と思われ、実態がわからないからです。
興味のある方は次の情報を参考にしてください。
参考) 厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』イチョウ
まとめ
映画「家族はつらいよ2」を観たことがきっかけで銀杏についてまとめてみました。
身近な植物ですが、銀杏(ギンナン)の毒はあなどれません。
ポイントは、
①経口中毒量は、小児 7~15個、成人 40~300個。
②主に嘔吐と痙攣。中毒死の例あり。
③加熱調理しても有毒成分はなくならない。
食べる量が経口中毒量に満たなくても、体調によっては中毒になるかもしれません。
お好きな方には残念なことですが、銀杏(ギンナン)は茶わん蒸しや飛龍頭(がんもどき、ひろうす)に入っているくらい、おこわなら少量1膳、串揚げなら1串(数個)くらいが安全圏かもしれません。
くれぐれも慎重に、食べ過ぎないように。
どうぞこの記事を参考になさってください。