生命の神秘―人類誕生―

人類(ヒト)の祖先が、チンパンジーやボノボ(以前はピグミーチンパンジーと呼ばれていた)の祖先と別れたのは、600万年前~700万年前だといわれています。

では、ヒトはどのように誕生したのでしょうか。人類誕生についてまとめてみました。

この記事の目次

ヒト(人)とは何か

ヒト(人)とは何か

そもそも人とは何でしょうか。

広い意味となると、ヒト亜族 (Hominia)に属する動物の総称です。

ちなみに、ヒト亜族とは、チンパンジー族と分かれ、直立二足歩行へ進化したグループのことです。初期の人類である猿人やさらに進化した化石人類の一群である原人もヒト亜族に含まれます。

つまり、現在は生きて存在していないものも広い意味ではヒト亜族に含めますが、狭い意味でヒト亜族というと現在生きている人類(学名 Homo sapiens)を指します。

ちなみに、「ヒト」はいわゆる「人間」の標準和名で、生物学上の種としての存在を指す場合には、カタカナを使うことが多いようです。

 

それでは、類人猿などその他の哺乳類とヒトとの違いは何でしょうか。

主なものには、直立二足歩行とコミュニケーション能力があります。

 

直立二足歩行

直立二足歩行

まず1つ目が、前述したように直立二足歩行を行うことです。ちなみに、直立二足歩行とは、脚と脊椎を垂直に立てて行う二足歩行のことです。

現在生存している生物の中で、この直立二足歩行ができるのは、ヒトだけです。

 

一見するとペンギンなどは直立二足歩行をしているように見えますが、これは体の厚みのためにそう見えるのだそうです。実際には、ペンギンの大腿骨は脊椎に対してほぼ直角であり、下腿骨のみが垂直になっています。つまり、常に膝を曲げた状態で立っているわけです。

従って、実際のところは直立二足歩行ではありません。

同じように、カンガルーなど他の二足歩行をしている動物も骨盤と大腿骨の構造上、大腿骨を脊椎に対して垂直に立てることはできません。

 

直立二足歩行のメリット

直立二足歩行のメリット

1つめが重い頭部を支えることができることです。ヒトはその体重のうち頭部に占める割合が全動物中で最も大きくなっています。

このように身体に比べると大きな頭を支えるためには、頭が直立した胴体の真上にある必要があります。
この構造によって、その頭部のさらに上に重量物を載せて運ぶこともできるわけです。つまり、それくらいの重量を支えられる構造になっているということです。

その結果として、ヒトは体重に比べると、巨大な脳容積を得ることができるようになったのです。この構造無くして、知能の発達はなかったといっても過言ではありません。

 

そして、もう一つの大きなメリットが前脚=腕が歩行から解放されたことです。それによって、重量物の持ち運びが容易になりました。
そのせいか、非直立の二足歩行を行う動物(恐竜など)と比べても、体に比べて大きな腕を持ち、重量物の運搬能力が高くなっています。

さらには、投擲(とうてき)といって「手を使って物を投げる」という他の動物にはない能力を得、狩猟などに役立てることができるようになったのです。

直立二足歩行のデメリット

直立二足歩行のデメリット

では、逆に直立二足歩行になったことでの弊害はなんでしょうか。

主なものが、身体にかかる負担です。

重力の関係で、他の動物ではめったにかからないような痔や胃下垂、腰痛、ヘルニアなどになりやすくなります。また、膝へ負担がかかりすぎて、膝に障害を抱えたり、ふくらはぎのむくんだりするのもヒトに独特のものです。

また、内臓を保持するために骨盤底を発達させる必要があります。そのため出産に困難がともない、胎児が小さく未熟な状態で出産しなければなりません。

 

他にも、身体能力上の問題があります。

たとえば、ほとんどの姿勢で頭部が安定しているため、首が細く弱くなっています。

また、重い頭部が高い位置にあるため、バランスが悪く、転倒するリスクがあります。

さらには、喉、心臓、腹部、股間などの急所が多い胴部前面を常にさらしてしまっているため、丸腰で戦うという点においてはかなり不利な状態です。

また、直立二足歩行は四足歩行と比べると高度な身体能力が求められます。そのため、習得するためには身体の成塾や長期間の訓練が必要です。

個体差もありますが、直立二足歩行ができるようになるには、生まれてから1年程度かかります。

また、逆に高齢になり、筋力やバランスが低下してくると直立二足歩行を行うことが難しくなってしまうのです。

 

コミュニケーション能力

コミュニケーション能力

ヒトのもう一つの大きな特徴は、コミュニケーション能力です。

ヒトは他の動物と比べ、脳や声帯が発達しています。そのため、身振りだけではなく、声(音声)を使ったコミュニケーション(音声言語)が可能です。

また、それだけではなく、手話や書記(書記言語)によってコミュニケーションをとることもできるのです。

 

ちなみに、音声による会話能力が発達したのは25万年以上前、ホモ属の発生以降とされています。

ホモ属は、哺乳類霊長目ヒト科の属の一つで、ヒト亜族のうち、大脳が大きく増大進化したグループです。現代人(ホモ・サピエンス)とすでに絶滅はしていますが、ホモ・サピエンスにつながる種がそれに含まれます。

 

人類が誕生するまで―霊長類―

地球上に最初の霊長類が誕生したのが1億年~7000万年前といわれています。

 

原猿

原猿

霊長類の中でもっとも原始的なサルは原猿類と呼ばれます。特徴としては、夜行性で単独で生活する種が多いことが挙げられます。

現存する原猿には、ロリス、ガラゴ、キツネザル、メガネザルがいます。

以前は、脳や目が大きいという特徴を持つということで、ツパイもその仲間と考えられていましたが、現在では独立した目として扱われています。

 

もっとも古い霊長類は、プルガトリウスで、白亜紀後期~第三紀前期の北アメリカやヨーロッパに生息していたと考えられています。化石から復元した見かけは鼻づらが長くネズミに似ていますが、系統的にはネズミとは異なり、サルにつながるもののようです。

霊長類は他の動物よりも目のしくみと手先の器用さ、脳の大きさが秀でています。例えば、目が前を向いていて立体視ができたり、4本の指と向かい合わせにできる親指(対向指)があるためしっかり握れたりするのです。

 

ただ、現在では原猿は正式な分類群としては使われていません。

霊長類は曲鼻猿亜目と直鼻猿亜目に分けられ、原猿は曲鼻猿とメガネザルの総称ということになります。

ちなみに、「曲鼻」とは鼻腔が屈曲して鼻孔が左右に離れて外側を向いていることで、「直鼻」とは鼻腔がまっすぐで鼻孔が左右そろって前方ないし下方を向いていることをいいます。

 

猿人

猿人

約600万年前には、初期の人類である猿人がアフリカ大陸に出現しており、約130万年前まで生息していたと考えられています。

中東アフリカで400万年から300万年くらい前に生きていたと思われるアウストラロピテクスの女性の化石もみつかっています。

 

猿人の最大の特徴は、直立二足歩行です。これにより、道具の使用や脳の発達が可能となりました。ただ、猿人の脳容積は約500ml程度で類人猿と同じくらいであり、現在の人間の脳容積(1,350mlほど)と比べると、まだ非常に小さい状態でした。

 

原人

原人

原人は、ホモ・エレクトスとも呼ばれています。

約180万年前にアウストラロピテクスから進化したと考えられています。

脳の容積は900~1100mlと猿人の約2倍。アフリカを越えてアジアででも生息していました。

約60万年前の氷河期には、毛皮を身につけ、天幕を張ったシェルターに住んだり、洞穴に暮らしたりしていたようです。

50万年くらい前には、原人による火の使用の痕跡が中国の北京で見つかっています。それにより、食料を調理したり、猛獣から身を守ったりすることが可能になったのです。

一見、単に過酷な状況に思える氷河期ですが、氷河期はミネラルなどの栄養素を土壌に与え、生命に必要な沃土を作ったともいわれ、その後の農耕文化発達にとっては必要だったのかもしれません。

 

旧人類

旧人類

ネアンデルタール人に代表される旧人類が登場したのが、約50万年~30万年前。

脳の容積は、1200~1400mlと現生人類と同じくらいです。ただ、頭蓋骨は厚く、目の上の骨が出っ張っていて、頤が欠如していることから現生人類とは区別されています。

 

ロビン・ダンバーは脳容積とヒト族の群れの大きさの関係について分析から旧人類が最初に言語を使ったと主張しています。

実際、2007年にネアンデルタール人の舌骨も発見されています。そのことで、ネアンデルタール人は解剖学的に現生人類と同じだけの音声を発する能力があるという説が唱えられるようになっています。

 

新人類(現生人類)

私たち現代人と同じグループである新人類が誕生したのが、約20万年前。その頃にはまだ旧人類もいたようですが、次第に新人類へと変わりました。

クロマニョン人と上洞人といった化石現生人類も額がふくらみ,頤が形成ており、新人類に含まれます。

2017年になってからも、ドイツなどの国際チームがこれまでで最古となる30万年前の現生人類の化石を北アフリカのモロッコで発見したという発表があり、30万~20万年前にはアフリカ各地で現生人類が暮らしていたのではないかとされています。

 

まとめ

人類の誕生と進化についてまとめてみました。

進化の過程をみていると、私たち現生人類も長いスパンでみたら進化の中の一過程であるかのようにも思えてきます。

ただ、環境などに適応していった将来、どういう姿になるのか、それを決めるのが現在の私たちなのかもしれません。

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この記事を書いた人

研修医期間終了後、神経内科医として主に急性期病院にて13年間勤務。
3年間の回復期病棟での勤務を経て、平成24年より在宅医療に従事。2018年5月ヘテロクリニック開設。

多くの患者さんにかかわる中で、より健康であるためには、病気にだけフォーカスをあてるのでは不十分なのではないかと実感し、医療の分野以外にも学んでいる。

高齢になっても若々しく元気な方たちの特徴から、自分らしく生きることが重要性を感じ、そのためのツールとして脳と心についての情報をフェイスブックページやホームページを通じて発信している。

日本内科学会 内科認定医、日本神経学会 神経内科専門医、医学博士、認定産業医、日本臨床栄養協会 サプリメントアドバイザー、感情カウンセラー協会認定 感情カウンセラー、リズ・ブルボーのからだの声を聞きなさいスクール カウンセラーコース終了、NLPプラクティショナー、著書に『クスリに頼らない免疫力向上計画』(みらいパブリッシング)、『脳の取扱説明書』(みらいパブリッシング)

HP:https://hetero-clinic.com/
HP:https://www.harmonista.org/
HP:https://harmonista.jp/

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